「アーモンドの花の下で」の言い訳+ss付
2019/03/07 16:24

「失礼いたします。総督閣下に用があって参りました」
 珍しく警備担当の下士官がロイエンタール邸の敷居をまたいだ。リビングで寛いでいたロイエンタールとベルゲングリューンは下士官を招き入れるとその用を聞いた。
「実は、先ほど外に例のカメラマンがおりまして、誰何いたしましたところ」
「待て! 今なんと?」
 ベルゲングリューンは驚いた。
「はっ。先ほど例のカメラマンがお屋敷を覗いておりましたので誰何いたしましたと申しました」
 ベルゲングリューンはロイエンタールと顔を見合わせた。まずい、先ほどはかなりまずい。
「そいつはまた何かとっていた様子か?」
「は、写真は確認いたしました」
「したのか! 卿が?」
「はい」
「・・・・・・」
 ロイエンタールは気まずい顔でこめかみを押さえている。あれだけレッケンドルフに釘をさされていたのに、気が緩んでいたのか。春か、春の陽気のせいか!
「ですが、何もとってはいなかったようで、そこはご安心ください」
「そうか!」
 あんなことがあったあとだから、ずいぶん神経質になっているのだなと下士官は思い、用件を切り出した。
「そのときにこのようなものを渡してきました。閣下とお約束したものだと申しておりました」
 角のつぶれた茶封筒はかなり厚みがあった。
「危険はないのか?」
「それは確認済みであります」
 手渡された封筒の封をロイエンタールは開けた。すると中からレーベンがヘビとにらみ合っている写真が飛び出してきた。ロイエンタールは思い出した。あのとき、アーモンドの花の下でした約束を。彼は「写真はお送りします」と言っていたのだった。写真は束で入っており、あの低俗雑誌に掲載されたものも中にあった。さすがはプロの腕前というべきか、雑誌の画素の荒い誌面で見たときにはわからなかった微妙なニュアンスがあり、見るものの目を奪った。
「御苦労だった」
 下士官をねぎらって下がらせると、ベルゲングリューンは写真をローテーブルに広げた。
「彼はやはりレーベンを撮っていたんだ。こうして見るとピントはレーベンに合っていることがよく分かる」
 ロイエンタールはかわいい愛猫の姿に満足げに頷いた。
「え? そうですか? 私からすればオスカーもとてもかわいいですぞ。というか、オスカーがかわいい」
 ベルゲングリューンはロイエンタールとレーベンがまるで見つめ合っているような一枚の写真を取り上げた。
「特にこれ、いい笑顔です」
 ニヤニヤしながら見とれていたベルゲングリューンはふと重大なことに気づき、愕然としてしまった。
「どうした?」
 あまりの急変にロイエンタールが尋ねると、ベルゲングリューンは恨めしそうな顔をした。
「オスカーは私にはこんな顔してくれないなぁと思いまして・・・・・・」
「なにを馬鹿なことを・・・・・・」
 呆れかえってため息をつくロイエンタールを見て、ベルゲングリューンはなぜかムラっとしてしまった。他の誰にも見せることのない彼だけの顔があることを思い出してしまったのだ。
「オスカー・・・・・・先ほどの続きをいたしませんか」


 ロイエンタールがどう答えたかは・・・・・・ご想像ください!



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