信じる者-6


 
「はっ!?お、おお俺ってば呪われてる!?」
 何を今更、と思わないでもなかったが、ナルトはそんな心中をきれいに押し隠して表面上動揺する。器用な真似が出来るようになったものだ。
 サビテルは大きく頷いた。いちいちオーバーなリアクションが心底うざい。
「ソウデス、アナタニハオ祓イが必要デース! ソノタメニハ、私タチノ本部ニ来ナクテハナリマセーン!」
「いいい行く行く!!行くってばよ!!」
 ナルトは一も二もなくその話に飛びついた。
 ちょうどいい、どうせ調査しなければならなかったのだ。向こうから招き入れてくれるというならそれにこしたことはない。
 虎穴に入らずんば虎児を得ず。
 ……いや、むしろ「飛んで火に入る夏の虫」か?

 そんなナルトの内面を知る由もないサビテルは、次に雪那に詰め寄った。
 まだ諦めてなかったのか。こんな拉致まがいの勧誘は、正直犯罪だと思うのだが……。「げっ」と呻いた雪那は、思わず隣にいたシカマルの後ろに隠れた。
「オ嬢サンモ、オ友達ガ心配デハアーリマセンカー? 一緒ニ行キマショーウ」
 間に挟まれて、結果的にサビテルの濃ゆいどアップに迫られたシカマルは、うんざりとした表情を隠すことなく溜め息をつく。
 雪那は、そんなシカマルをふと見上げた。
 ただの変な宗教団体だと思っていたが、シカマルの最初の行動といいナルトが「行く」と言い出したことといい、何か裏があるのだろうか。
 だがシカマルがその視線に答えを返す前に、いつの間にかサビテルの横に来ていたナルトが雪那の手をそっと取る。
「セツナ……俺、セツナに一緒に来て欲しいってばよ……」
 それはぎゅっと手を握って青い瞳をうるりと潤ませ、上目遣いで強請るという、萌えツボを全て押さえた完璧なおねだりで。
「行きますともー!!」
 雪那は当然、即答してナルトに抱きついた。

 わざとだと分かってても、心臓狙い撃ちだ!!
 むしろ点穴突かれるよりダメージ深いから!!
 ナルトったら、いつの間にこんな技を覚えたの!?

「決マリデスネー!」
 サビテルは親指をぐっと立てて、バチコーン☆とウインクして見せる。
 ……これはあれだ、ナイスガイポーズだ。ちっともナイスガイじゃないけど。
「……あー、じゃあ俺は帰るから。二人で行って来い」
 その濃ゆい宣教師もどきから視線をあからさまに逸らしたシカマルは、片手を上げて踵を返した。
 一緒に来るものと思っていただけに、雪那は意外そうに瞬く。
「え、シカマルは来ないの?」
「めんどくせーからパス。……じゃあな」
 言って、巻き込まれたくないとでも言うようにそそくさと去っていくシカマル。
 その理由はとても彼らしかったけれど、あの壺に興味があったのではなかったのだろうか?
「セツナ、あいつがめんどくさがりなのは、今に始まったことじゃないってばよ」
 それより早く行くってば、とナルトに促されて、雪那はやたらテンションの高いサビテルについて歩き出した。
 ――ナルトが踵を返す直前、振り向いたシカマルと意味ありげな視線を交わしたことなど、微塵も気づかないままに。

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