信じる者-5


 
「チョウド良イデース、アナタ方モ私タチノ説法聞キニ来テクダサーイ。今、願イノ叶ウ厄除壺、差シ上ゲテマース」
 サビテルは、ナルトとシカマルにまで布教するつもりらしい。あの小さな白い壺を誇らしげに掲げている。
 どうしたものかと雪那が思案していると、珍しくシカマルがそれに興味を示した。
「へえ。……それちょっと見せてくんねー?」
「イイデスヨ、ドウゾー」
 サビテルは何のてらいもなく壺を手渡す。――シカマルの子供にしては鋭い目がつと細められたことに、気づいたのはナルトと雪那だけ。
 手元の壺をためつすがめつして、シカマルはサビテルに尋ねた。
「願いが叶うって言ったけど、どうやるんだ?」
「ソレハ、私タチノ話ヲ聞キニ来テクダサッタラ、オ教エシマース」
 ソレマデハ秘密デース、とサビテルはのたまい、ばちんと音がしそうなウインクを一つよこしてくる。
 ……一瞬、木の葉一濃ゆい男、マイト・ガイがかぶって見えた。
「……あー……、ナルト、お前も見るか?」
 シカマルはさりげなく視線を逸らす。ナルトに話を振るものの、それはあからさまに逃避だった。
「――あ、うん。見る見る!」
 げっそりとした顔でサビテルを見ていたナルトは、我に返ってカクカクと頷く。
 しかしシカマルからその壺を受け取った瞬間――。

「うわ!?」
 ぱあん、と激しい音を立てて、壺は砕け散った。

「ナルト!?」
 慌てて駆け寄った雪那の足元を、掠めるように逃げていった小さな影。それを視界の端に捉えて、ナルトは一瞬目を細める。
 砕けた壺の欠片は、地面に落ちるより先に溶けるように消えていた。
「大丈夫?ケガしてない?」
「……あー、だいじょーぶ。びっくりしただけだってばよ」
 心配そうに手元を覗き込む雪那に、ナルトはニカッと笑って見せる。確かにナルトの手には傷ひとつなかった。
 しかし、慌てたのは雪那だけではない。

「大丈夫、デハアリマセーン!!」

 大げさな声に振り向くと、サビテルが真っ青な顔で愕然と目を見開いていた。
 そういえば、持ち主はこいつだった。それを割ってしまったのだから騒ぐのは当然だ。欠片も残らないのでは、修復のしようもない。
「あ……ご、ごめんってば。……触っただけで割れるなんて思わなくて……」
 眉尻を下げておろおろとうろたえて見せるナルトの肩をがしっと掴んで、彼は真剣な目を向けた。
 二対の青い瞳がかちあう。
 そうして雪那とシカマルが固唾を飲んで見守る中で、厳かに告げられたサビテルの言葉は。

「アナタハ、呪ワレテイマース!!」

 であった。

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