信じる者-4


 
 そのころ、雪那は裏通りを全力疾走していた。
「待ッテクダサーイ、オ嬢サーン!!」
「ぎゃーーー!!何で追っかけて来るのォーー!?」
 チャクラを足に集めての全力疾走なのに、ザビエル(仮)が胡散臭い笑顔をはり付けたまま背後に肉迫している。

 ありえないから!!

 まだ修行中の身とはいえ、雪那は仮にも忍の卵だ。この速度についてこられるということは、絶対ただの宣教師じゃない!!
「だから行かないって言ってるでしょーー!! このザビエルーー!!」
「『ザビエル』デハアリマセーン! 私ノ名前ハ『サビテル』デース!!」
 惜しい。わずかに違った。
「錆びてるのはアンタの頭ん中よーー!!」
 叫びながら、まるで車のタイヤが急激なカーブに差しかかったような音を立てて角を曲がると、その先のどんづまりは壁、即ち袋小路だった。
 しまったと思うが、引き返せばザビエル改めサビテル(紛らわしい)の正面にジャストミートだ。
 雪那は瞬時に判断して、そのまま奥に向かって走る。足裏からのチャクラの放出を吸着に切り替え、立ち塞がる壁を一気に駆け上がって向こう側――表通りの方に飛び降りた。
 元の世界なら確実に、運が良くても骨折くらいじゃすまないだろう高さからの、軽やかな着地。木の葉に来る前は到底できなかった芸当だ。雪那は思わず、ぐっと握り拳を作った。忍者万歳。
 さすがにこの壁は乗り越えられないだろう。
 そう思って振り返ると――。

「壁登リハ、反則ダト思イマース!」
「ぎゃーーー!!」
 普通に、まるでちょっとした壁を乗り越えてくるかのように、イルカ先生五人分くらいの高さはある壁のてっぺんにしがみついているサビテルと、目が合った。
 反則なのは、むしろアンタの存在だ!!
 雪那は全身に鳥肌を立てたまま、慌てて踵を返す。
 再びチャクラ付き全力疾走かと思ったところで、こちらを見ている胡乱げな二つの視線に気づいた。
「………………何やってんだ? セツナ」
 胡散臭そうな目つきで雪那を見ていたのは、たぶんアカデミー帰りのナルトとシカマルで。
「救いの神ーーー!!!!」
 雪那はほとんど半泣きになりながら、走り出そうとしたその勢い(足にチャクラを集めた状態)のまま、ナルトに飛びついた。
「ぎゃーー!! 何すんだってばよーーー!!」
 がらがらごでろんぐしゃーーー。
 一応衆目のある場所で、『ナルト』が避けたりがっちり受け止めたりするわけにはいかない。そんなわけで、ほとんど正面衝突の状態で二人は背後に転がっていった。

「……あー、大丈夫かー?」
 実にやる気なさそうに、振り向いたシカマルが気の抜けた声をかける。
 もつれるように向こう側の壁に突っ込んだ二人だったが、しっかりナルトが下敷きになっているのはさすがと言うところか。
 後頭部をさすりながら、ナルトが半身を起こした。
「いってえ……」
「うう……ごめんナルト、勢い余った……」
 雪那はぶつけたらしい鼻を押さえて呻く。大型車との交通事故くらいの衝撃だった……いらんところで修行の成果が発揮されてしまったようだ。
 そうして足止めされている間にサビテルは軽やかに着地し、大げさな身振りで寄って来る。

「オー! ヤット止マッテクレマーシタネー!」

 ……断じてサビテルのために止まったわけではない。雪那はそう思ったが、もう言い返す気力もなかった。

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