信じる者-3


 
「……全体的に減っておるが、特にDランクの依頼がほとんど来なくなってな。下忍向けの任務が特に不足しておる状態じゃ。このままこれが続けば、近いうちに里の運営にも支障が出るじゃろう。それから、もう一つ気になることがある。今、各地で一般人が廃人状態になる現象が多発していての。薬物なのか病なのか、原因は今のところ一切不明じゃ」
 三代目は一通り説明を終えると、今度は間違いなく本物の溜め息をつく。
 暗殺任務や争いの工作が減るのは、木の葉の収入源が減ることになるが、ある意味平和になったと喜ぶべきところかもしれない。
 だが失せ物探しや畑の手伝いなどの依頼まで、急になくなったというのは明らかに異常だ。
 一般人が廃人状態になって原因が不明というのも、関連があるのかどうか……。
 半眼でその意味を考えていたナルトは、顔を上げて三代目に視線を戻した。
「それで廃人になるって方はともかく、依頼減少の原因は把握してんのか?」
「暗部の諜報部隊には既に調査を命じてある。報告によれば、依頼が減り始めたのはとある宗教団体が火の国に入って、布教を始めたころと重なるんじゃが……関連があるかどうかはまだ分からん」
 ナルトは目を細めた。それはおそらく、さきほどシカマルが言っていた連中だろう。
 暗部の諜報部隊ということは、調査の任務についているのは『一楽』の部隊のはずだ。だが総隊長であるナルトは、当のテウチからそれについて一切の報告を受けていない。

「……俺はそんな話聞いてねえぞ、じっちゃん」
 殺気すら漂わせそうなほど低いナルトの声を聞いて、三代目は再び溜め息をついた。
「そりゃそうじゃ。おぬしらには報告せぬように、わしが『一楽』に指示したからの」
 誰よりも過酷な任務を、年端もいかぬ子供にさせているのは、三代目も自覚しているのだ。
 年齢がどうであれ、忍は忍。それはわかっているが、少しでも休ませてやりたい。
 だから報告を禁じたのだが、『一楽』はナルトの腹心の部下でもある。無断で使っては、やはり怒るだろうか。
「暗部は火影直属の部隊じゃ。わしが無断で使っても、誰も文句は言えんはずじゃがのう?」
 そう言って、わざとおどけるように口の端を上げて見せた三代目を、ナルトは憮然として睨みつけた。
「そうじゃなくて! そういう時は、一番に俺に相談しろって言ってんの!」
 じっちゃんのバカ! と紅潮した頬を膨らませてそっぽを向いたその様子は、頼りにしてくれなくて拗ねている子供そのもので。
 三代目は、目をまるくした。
 確かにナルトは三代目の前でだけは感情をあらわにすることも多かったが、ここまで年相応の可愛らしい反応をすることがあっただろうか?
 驚愕が去った後にこみ上げてくる微笑みを、止めることはできなかった。

「……何笑ってんの、じっちゃん」
「いや……頼りにしとるよ、総隊長」
 憮然としたままのナルトに、三代目は任務を告げた。

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