甘い思い出
あの後、ひぃちゃんから奇跡的に逃げ切れた。
家に帰り着くまでに鬼のようにメールが届いて恐かったけど。
冷蔵庫からお茶を取り出し飲んで、ふと思う。
日向くん、めっちゃ大きくなってたなぁ。
記憶の中にいる彼は私と同じくらいで、私が泣くときはいつも飴をくれていた。
――「…ぐすっ、ぐす、うぇぇえん」
「名前ちゃん、なかないで。おれがついてるから」
「おがあざぁぁん!!ふぇえええん、ぐすっ…!」
「これあげるから、名前ちゃん、」
「ぐすっ……あめちゃん?えへへ、ありがとう!」
「…なくな、だぁほ」―― 私は飴をもらった途端、すぐに泣き止んで、そしたら日向くんはホッとした顔して泣くなダァホっていうんだっけ。ダァホってなんなんだろうって聞けなかったなぁ。
今でも、なんだか泣くときは飴をなめてしまう。
ほら、制服のポケットに今も飴が……ない。
どっかで落としたのかな…。
飴は、本当はなんでもいいんだけど、パイン飴。
いつも日向くんがくれたやつ。
日向くんはこんなことも忘れているのかなぁ。
そう思うと、なんだか胸が痛くなった。
08.甘い思い出
―――
今回は回想です。not妄想
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