少しずつ

某元幼なじみのあの人はバスケ部らしい。私の中学もなかなかに強かったことを覚えている。

それはさておき、
木曜日のLHRで席替えがあった。友人ひぃちゃんとは以前よりも近くなった。なによりである。
私の席は廊下側のドア付近。この場所というのは結構人通りが多い。邪魔に思うことも多いけれど涼しいのでプラマイゼロなのである。


「いつきくん、消しゴム落としたよ。」

隣の席になったのは伊月くん。顔だちもイケメンで人気があるのだけれど、髪がサラサラすぎて私はご尊顔よりも髪をガン見してしまう。

「え、―…あ、うん、ありがとう」

そんなに不思議そうな顔をしなくてもいいのではないだろうか。私だって消しゴム拾うくらいには人間ができているつもりだ。

…ん?この消しゴム、伊月くんのものじゃなかったかな。


双方微妙な顔をしていると、ひぃちゃんがやってきた。

「伊月、悪いわね、この子は人の名前をなっかなか覚えないの。
 名前も隣の席なんだからきちんと覚えな。いづきよ、いづき!つに濁点!」

「いつきくんじゃなかったんだ…!」

「いづきといつ気づく…はっ、キタコレ!」

「本当、残念なイケメンって感じるわぁ…。それに、洒落になってんの…?」

ひぃちゃんはうわぁ…って顔をしているけれど、私は普通に伊月くんの洒落が好きである。頭の回転早いね。



「そういえば名前、元幼馴染だけは間違えなかったわね。」

「まぁ一応幼なじみだったからね。それに、だけって程でもないし。」

「いや、あんたなら名前しか覚えてないとかあるじゃない。フルネームなんて奇跡よ奇跡。」


キセキと聞くとカラフル集団を思い出すのは染みついた何かによる作用だろう。


―――

ひぃちゃん
山本ひいろさん

きっと年上好き。伊月くんとかの顔がタイプ。


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