それでも私は
「"よかった"って、
どういう意味だろう。」
あれきり、会話はなくて
家に帰るなり私は自分のベッドでゴロゴロ転がりながら考えていた。
よかった……―
―「名前に彼氏がいるんじゃなくて、よかった。」 「――えっ?」
私は思わず聞き返した。時が止まるような、そんな間隔。
思わず期待して、視線は日向くんの目。続く言葉を一秒でも早く読み取りたい、なんて思って。
「俺さ、お前のこと、好きなんだわ。」
ああ、私の期待に応える、その言葉。嘘じゃない。眼鏡の向こうの瞳がそう教えてくれる。――なんてねー、いや、ないわ。次いこう
―「よかった。先越されなくて。ずっと幼なじみだったもんな。
お前に先越されるなんて俺ショックすぎる」―ショックといえば…
―「よかったわ、笠松さんの彼女がお前じゃなくて。
笠松さんにもったいない」―とか、
―「よかった…、あっやべ、えーっと…
まぁ、名前ならいいか、俺、笠松さんが、す「そんなのいやぁぁあ!!」
流石に、これはない。
うん。
願うだけなら、
一番最初がいいなぁ、なんて。
でも、願うだけじゃだめってわかってる。
一縷の望みでもさ、いわなきゃいけないんだ。
森山さんみたいにハッキリいえなくても。
中学のとき、黒子くんがマネージャーに言われたみたいにハッキリじゃなくても。
ただ、一言でも。
でもなぁ。私に言えるかなぁ…?
帰るときにも、やっとつっかえずに喋れるようになったばかりなのに。
言わなくてm《〜〜♪》
「メール?ひぃちゃんだ。」
《言わなくてどうするのよ。ばかね。》
ちょっ、なんで?!
まぁ、確かにいわなきゃいけないんだけど
幼なじみに戻れた今、
先に踏み込んで、それすらもなくなっちゃたら
なんて思うと、
《あんたがいわなきゃ、あたしが言うわよ。サクッと》
ひぃちゃんならやりかねん。
もう不思議なメールには突っ込まない。
「今日、言おう」
18.それでも私は
――――
笠松さんと日向くんに全力でごめんなさい(m´・ω・`)m
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[mokuji]
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