ひしひしと


 現在体育館前。

私はひぃちゃんにセーラーのリボンを握られ待機していた。


 あ、黒子くんだ。バテてるなぁ。

「あんたは日向くん見てなさい」


 …無理だ。

 今日あんな風に言われてしまっては、なんだか恥ずかしくて見ることができない。


 ほら、汗を練習着の首もとで拭ったり、
真剣な眼差しでシュートしたり、
シュートが綺麗に入ってほんの少し微笑んだり。


…見れる訳ないじゃん。



+++



「お邪魔しまーす。」

「お、おじゃします…。」

 あの地獄のような時間をなんとか耐え切って、ついに体育館に二度目の潜入。

流石に今日は逃亡なんてできない。ひぃちゃんに冗談抜きでシメられる。


 相田さんと伊月くんがこっちにきた。
差し入れとか一応もってくるべきだったかとか今更思った。

ひぃちゃんは相田さんと何か喋ってるが、嫌な予感しかしないのは気のせいにしたい。



「日向君、ちょっと来て」

 相田さんが日向くんを呼んだ。


 まさかと思っていた予感のひとつ。


 呼ばれた本人はタオルで汗を拭いながら歩きだした。



「何だ?練習試合なら…」



「ーーーっ!!」
「こらっ」



 踵を返して駆け出そうとする瞬間にひぃちゃんにリボンをぐいっと引っ張られた。




 いや、ほんと…、無理なんだって!!





「……名前?」




10.ひしひしと




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