05

さっきの2対1から、1対1どころか1対2に形勢逆転されてしまったあたしはどうすればいい?


加わった二人目はオレンジ色をしたとてつもないイケメンだった。染めているような感じではなく、馴染んだ色で、目も綺麗な空色をしている。
電車降りてから顔面偏差値一気にあがった気がする。

「まずは確認するね。…いや、"ね"ってうわぁ、我ながらキモいわ。

小声の内容はきっとツッコンじゃいけないんだろうなあ。

「さっさとすすめろ、ヒカル」

「はいはい、あーっと、お名前は苗字名前さんであってる?」

「はい、そうです」

ふんふんと頷く彼女は天乃ヒカルだと名乗った。
駅員さんとは違って動揺のない彼女にあたしは少しほっとした。

「日本のどこ出身?職業は?」

自分の出身県と大学生であることを告げるとヒカルさんは、私の家と近いな、懐かしいとか呟いてた。


「そんで、名前さんは、ポケモンって知ってる?」

「アニメの中のキャラクターですよね」

自分の仮説を否定するように答えた。

「んー、半分正解かな?」

素直に喜ぶことのできないその言い様に顔をしかめた。

「まず、ポケモンはアニメじゃなくて、ゲームが始まりなんだよ」
「そこじゃないだろうが」

いってぇなと横の男性をジト目で見るヒカルさんがもどかしい。

「大きな違いは、このセカイではポケモンはちゃーんと生きてるってこと」

火翼頼んだと男性を一瞥したヒカルさんの言葉はまっすぐ突き刺さってきた。
男性は一瞬光ったと思ったら大きな、多分ってか、確実にポケモンになった。

「ええぇぇぇ!!リザードン?」

「せいかーい、よく知ってるな」

確かサトシが仲間にしていたリザードンは辛うじてあたしの記憶にもあった。
そんな姿を見ると、仮説はどんどん存在感を強めてくる。


「火翼戻ってくれ。ちょっとコイツは違ってて擬人化もできるんだけど、普通のポケモンはできない。

 さて、流石に名前さんも気づいているとは思うけど、ここは日本じゃない。
 とある事情で異世界に来たんだよ。そんで、私も日本から来た。」


いやいやと否定することは出来そうになかった。
頭大丈夫ですかとでも言おうものなら、それはあたしにそのまま返ってくる。

あたしだって同じことを考えているのだから。




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