03

事務室らしきそこは暖房がきいていて、黒い人はコートを脱いだ。
おすわりくださいと促され座った椅子は小学校の保健室やあたしの通う駅と同じもので、やっぱりいつもの駅と近いここにどうしたらいいのかわからなくなった。


「さて、まずはお名前を教えてくださいまし」

出された湯呑みを目の前にしてあたしの冷や汗はドバドバと流れ落ちていた。

「あた、あああ、あたしの名前、は、苗字名前です…」


名前を名乗った瞬間、前の黒い人の目が見開かれた。
え、なんなの…。
知り合いと同じ名前とでもいうのだろうか。犯罪者と同じ名前かもしれないという説はスルーさせていただく。

「名前さんですね、
 …では、出身国は?」

国って、こんな日本人顔して日本語喋るあたしが外国人と思われているのだろうか。アジア圏の人と思わているのかもしれない。


「日本ですけど」

ピキッ、言葉にするならそんな空気がながれた。
ガタッと音がしたのはどうやら肘がぶつかったようだ。

「これは…、クダリ、ヒカルさんに連絡してくださいまし」

明らかにこの場の空気が変わった。まずい感じ、これ?
…ほ、捕虜とかになっちゃうの?!


それと、名前さん、ポケモンってご存知ですか?といって駅員さんは机に、かの有名なモンスターボールを置いた。

まさかとは思うけど、本物だったりします?
ポケモンですか、コレ。

夢みたいな仮説は、どんな論よりも妥当性があった。いや、信じられないんだけど。


そのあとは、
あれよあれよという間に、あたしのマサラタウン行きが決まった。

マサラタウンって、アウシュビッツみたいなとこじゃない、よね。
がたがたと震えたあたしの頭に黒い駅員さんがポンッと掌を乗せた。

「心配いらないですよ。あなたの安全は我々が保証しますから」

きゅん

「はい…!」
落ち着いたテノールに優しい笑顔を向けられあたしは一瞬にして陥落されてしまった。

何を隠そう、あたしはイケメンと名のつくものに弱いのである。





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