09

「こいつはポニータっつうポケモンだ」
やってきてしまった時間、自己紹介が始まった。
ヒカルさんは図鑑というのを取り出し、あたしに見せた。

「強くなったらこっちのギャロップに進化するんだよ」

図鑑の中のポニータとギャロップはかわいいと言うより凛々しかった。

「ポニータ、お前がここにきた理由言ってみろ」

ヒカルさんがそういうとポニータはこちらをチラリと見た後渋々と口を開いた。

【ニンゲンになりたいから】

「こいつは、ニンゲンになりたいんだよ」

【ヒカル、なんで、こんなやつに言うんだよ】

呆気にとられたあたしは、きゃんきゃんとうるさいポニータは無視して、ヒカルさんをじっと見つめた。

「火翼みただろ?あんな風になりたいって言ってやってきたんだ」

火翼さんがリザードンになったのを思いだした。
つい人間と思ってしまうけど、彼も本当はポケモンなんだった。

「擬人化にはちょっと条件があってな。願いを叶えてあげるためにも協力しているんだよ」

ポニータにもそんな事情があったなんて初めて知った。ポケモンもいろいろ考えているんだ。

「人間になるからには名前がいるよな…じゃなくて、いるよね。ポニータは何か希望ある?」

【考えたこともなかった…。
 火翼サンみたいに俺にもつけてよ】

「いいっちゃいいんだけど、あいつらが拗ねるしなぁー。名前さんは何かない?」

「あ、あたし?」

まさかここで白羽の矢が立つなんて。
ポニータ思いっきり嫌そうな顔してるんですけど。


【よりにもよってこいつかよ…】

「こら、ポニータ名前教えただろ」

【よりにもよって名前かよ…って、それでいいの?ヒカル】

「よくはないな」


ひたすら毛並みを眺めて頭をフル回転。

なにか…
ポーちゃんはないな。
ミルクって犬の名前じゃないんだし、
そうだよ、人間としての名前なんだから。


…あ

「サクヤ」

「ん?」

「サクヤってどうでしょう?」

却下されたら違うの考えよう。
友達の名前なんかを検索してみるけど、ポケモンのときも人間のときにもしっくりくる名前はあんまりなかった。


「いいな、それ」
「へ」

ヒカルさんはポニータと何か会話している。
今更だけど、ヒカルさんてポケモンの言葉わかってるよね。
電車からマサラに来るまでを思い出しても他の人はそうでもないみたいだし、
本当この人なんでもアリだよね。

「サクヤも気に入ったてよ」

あのポニータが気に入るとも思えなかったけど、きゃんきゃん言っていないので大丈夫なんだろう。


「ま、今日はこんなところかな
 明日に備えて寝ようぜ」

色々と疲れていたので、正直ありがたかったあたしは、二階へと上がるヒカルさんについていった。





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