呼び出しってなんか怖いよね…

 どうごまかそうか困るけど、でもちょっと嬉しかったり。僕が白廉のそばにいることで、白廉の役に立てるかもしれないってことだから。もしかしたら、今後白廉がお仕事の時についてくなんて展開になるかも。つまり白廉の勇姿を見る回数が増えるかもかも!いや、そうする。絶対そういう展開に持っていくぞ!
 てゆか白廉、やっぱりというかなんというか、普通の人じゃなかったんだね。小学校の時にも感じた、あの浮世離れした感じ、そのせいだったのかな。
 それから、赤…じゃなくて緋色?に光る目のこと。あんなの他の人に見られたら、考えることとしては「俺は夢を見ているんだ」か「このままファンタジーラノベ方向に行っちゃう感じ?行っちゃう感じ??」か「目にLEDライトでも埋め込んでるの?」の三択くらいだよね。まあいずれにしても頭おかしいんじゃないかって思われるだろうなー。でも白廉は本当のこと…かどうかわかんないけど、ちゃんと説明してくれた。それも嬉しい。
 …こいつも頭おかしそうだから大丈夫だろうなんて思われたかも、ってことは考えない方向で。
 なんか、昨日の夜から嬉しいことがたて続けで頭がいっぱいいっぱい。てかそもそも白廉と毎日会えるってだけで幸せ全開!
 ひとしきりむふふーとやって、幸せの波が落ち着いたところで先生の方を向いてみる。一言も話し聞かないのはなんか悪い子すぎるからね。そういやプリントも何枚か回されたけど、全く目を通してないなぁ。で、今はなんの話?
「よしじゃあまず、A組と組んでやってもいいぞってやつ手ぇあげろー」
 へっ?!
 え、A組と組むっていうのに反応して、反射的に手をあげちゃったけど…これなんの話だろ。
 隣の子に聞いてみると、
「えと、その、合宿で、BからE組のそれぞれ10人くらいずつが、編入と組んで、ホテルの部屋同じになったりしなきゃいけないらしくて、その組む人を募ってるっていうか…」
 って顔を赤らめながら教えてくれた。
 あーはいはい憧れのなみちゃんに話しかけられて嬉しいのねはいはい。
 で、そっか、合宿の話なのか。
 合宿ってのは、なんのためか知らないけど、うちの学校毎年どっかしら泊まりに行くんだよ。それの今年の分だね。編入っ子たちと親睦を深める的な意味もついてるらしい。多分そのA組と組むってのはその一環だろうね。あ、行くのは来週だよ。
 そっかーじゃあ僕いま手をあげたから、誰かA組と組むことになるんだね。ナイス、僕の反射神経と白廉レーダー。教室の様子を見る限り、別に争奪戦にはならないっぽいし、僕は決定かなー。まあそりゃそうだよね。普通知らない人と行動するのは怖いもんねー。
 そうだ、A組の誰と組むんだろう…白廉だったら最高だけど、そうなり確率はものっそい少ないよね。まあいいや。誰となっても仲良くして、白廉の情報でも回してもーらおっと。
 そんなことを考えてるうちに10人ちゃんと集まって、HRが終わった。プリント片付けなきゃ。
 ちょっと時間なくてわたわたしてたら、ざわざわし始めた教室の声をかき消すように、先生が声を張り上げた。
「沢本ー。終わったら職員室の俺のところ来ーい」
 えっ?!
 固まっちゃった僕を置き去りに、皆はさようならーの挨拶。
 ええええええちょっとちょっと待ってなになになになんで僕呼び出されるのなんでなんで?!いや思い当たることがないわけじゃないむしろありすぎるんだけどさっきこっそりメール読んでたことと傘。とかさ!
 先生も出てっちゃったから、僕も大急ぎでいろいろカバンにまとめて突っ込んで、ひーんと先生の後をついて行った。


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