皮をかぶる
SEは、”ドーン”だろうか。ひたすらに明るい方へ進んでいた俺たちの前には、どデカイ門が鎮座していた。
「…えーっと、朱雀門?」
そう。だいたい雰囲気はそんな感じだ。
「ってことはなみ達、タイムスリップしちゃったの?!」
「まだ異世界という可能性が、おい、こら、俺の上で騒ぐな。下ろすぞ」
「え、やだ」
俺の髪をしっかり掴んで、絶対降りないアピールをしやがるなみ。髪は色素が薄くて弱く、引っ張られるとすぐに抜けるからやめてほしい。結局コイツは、山道が終わっても俺の背から降りなかった。誰かに会った時に恥をかくのはなみの方だと思うのだが。
朱雀門のような門に近づくと、その門が閉まっているのがわかった。
「とまれ、そこの童」
門の上から声がかけられた。見上げると、ぼんやりと人影がある。
「えー、どちら様ですー?」
姿が見えないというのに臆せず答えるなみ。コイツは人見知りという概念がない。
「私は門番だ。そこで待っていろ、すぐそちらに行く」
人影が動き、消えた。
「なみ、降りろ」
「え、やだ」
この後に及んでまだそんなことを…。
問答無用でなみの足を抱えていた腕を離すと、なみはしばらく俺の腰にしがみついていたが、諦めたのか疲れたのか、俺から降りた。口はヒヨコのままだが。
そうこうしているうちに、門番が降りてきた。
「こんな夜更けにどうして童が断霊門の外にいるんだ?親はどこだ、それと家は?」
体感では7時ほどだが夜更けというほどか、や、低身長男子だがそんな親や家の心配をされるほど幼く見えるか、などツッコミどころは満載だが、さて、なみが気になるのはどこだ。
「……だ、え、うん?何門って?」
やはりそこかー。
「断霊門だ」
「ダンレーモン?」
「あぁ。霊を断つ門。東西南北に一つづつ計四つあるのだが、全て締まれば結界が発動し、霊は入れない」
「なんか中二臭い…それ、にっぽん?」
「いや、違う」
「は?」
「おい、なんの話をしている?」
門番が訝しげに割り込んできた。
あー、説明する前に、まず名乗らなければいけないか。
「私は”緋の宮”だ。不測の事態により、私だけでなく友人も連れてきてしまった。ここを通る許しが欲しい」
門番が驚き、一歩引く。なみはもうなにも言うまいと俺の後ろに下がった。
先に行っておくが、これより先は何を言っているかわからないだろう。ここは斜め読みをしておき、次話を読むことをおすすめする。
「…信じられません」
門番だ。信じられないという割には敬語だ。俺が本物だった時の予防線だろうか。本物なのだが。
「そうだろうな。私がいなくなってから、私を偽る者共が多くいたのではないか?」
「……。その通りです。そしてその度に、青の宮様が見破られ、処刑なさっております」
「え?」
「ん、誰て?」
なみが口を出してきた。全く状況把握ができないにしても、登場人物くらいは掴んでおきたいのだろう。
「青の宮様です」
「名は煌雅。俺の兄だ」
「白廉お兄ちゃんいたの?!てっきり白廉が一番上の子だと思ってた!」
「あぁ、うん、まぁ、兄弟仲はよくないのだが、反応するところはそこであっているか?」
青の宮の部分をきかれるかと思ったのに。
「そこで、です」
門番がまた話し始めた。
「青の宮様のお手を煩わせることのないよう、我々もふるいをかける事にいたしました」
「どのようにして?皇族のことはあまり多く聞かされてないのだろう?」
「ええ。ですが、皇かどうかを確かめることはできます」
「あぁ、なるほどな。皇族は数が少ないしな。詳しく聞こう」
「はい。立ち話もなんです、移動しましょう。今夜のご宿は?」
「丁度どうしようかと思っていたところだ」
「ではご用意します。ご友人の方も。どうぞこちらへ」
「ありがとう」
歩きながら、俺の後ろを付いてくるなみがぼそりといった。
「…白廉、わかってるよね、説明」
「……」
「返事は?」
「…はい」
なんだろう。俺は何も悪いことをしていないはずなのに、責められている気分になってくる。
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