駄々をこねる

 木々の隙間から、明かりが見えた。
「あぁ。やっぱり人は明かりがあると安心するな。おーい、なみ。あとちょっとだぞ」
「白廉のちょっとは長いんだってぇー」
 まだ一時間も歩いていないのに、ヒーヒー言っている。確かにアップダウンの激しい道ではあったが、そこまで疲れるものだろうか。なみは女装しすぎて体力まで女子になってしまったのではないのか?
 そんなことを考えながらなみを待っていてやると、やっと追いついたなみがジト目でこちらを睨んだ。
「なみが、体力無いとかじゃ、ないんだからね。白廉、が化物なだけ、なんだからね」
「なんだいきなり。化物だとか失礼なやつだな」
「白廉だって、どうせなみの体力女子並とか、失礼なこと考えてたんでしょー」
「……」
 何故わかった。
「まあいい。ほら、人が通る整備された道があるぞ。あそこを行けば歩きやすいだろう。頑張れ」
「やだ」
 なみがしゃがみこんだ。足が疲れている身なら、そちらのほうが辛いだろうに。
「…駄々をこねるな」
「いーやーだー」
 口を尖らせてそっぽを向いている。
「どーせなみは服だけじゃなくて体力も女の子ですからー。もう歩けませんー」
「…拗ねるなよ」
「ふーんだ」
 なみは可愛い服に見合うだけの見た目も持ち合わせているので、正直コイツが女だったら耐えられる気がしない。だがこいつは男だ。しかも意外に体の丈夫な。だからここで甘い顔を見せるわけには…
「…わかった。おぶってやる」
 しまった。
「ホント?!」
 元気だなおい。
「あぁ。どこかの女装男子曰く、俺は化物なみの体力らしいかr」
「ありがと白廉!」
 聞いちゃいない。
「山をおりたら下ろすからな」
「うん!白廉大好き!」
「はいはい。転生して女になってから出直せ」




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