Passionflower 4

【玉西 玉男視点です 過去のお話】











「ホント下手くそだな、お前」
 廊下に通じる扉が開いて、長身の姿が現れた。
 和泉くんだ、と思ったのと同時に突き入れていた性器が強く締め付けられる。
「……い、ず…み…」
 さっきまで痛みに泣き叫んでいた彼が、蒼白になって扉の方を仰いでいた。
 その驚き方を見て、ああやはり彼は気がついていなかったのだと思う。
 ここ数回、彼を犯す度に和泉くんの気配をドアの外に感じていた。
 始めの時はただ、用があって戻ってきたのだと思う。
 それで偶然この部屋の惨状を目撃したんだろう。
 どうしてそれから何度も覗き見をしていたのかは、判らないけれど。
 この部屋には濃厚な血の香りが漂っていた。
 床には引き摺ったように血の跡がついていて、その先には彼が倒れて犯されている。
「西くん」
 茫然自失の状態でいる彼に、声をかける。
 すると思い出したようにまた中がキツく締まって、痛みを生んだ。
「痛、……痛い、ッ」
 腰を動かすと彼はいつも呪文のようにそう繰り返す。
 負担を減らそうと思った事がないわけじゃない。
 うつ伏せにさせたり、どう体位を変えてみても、彼の中は狭く突き入れる度に夥しい血を溢れさせた。
「あーあ、……オイ、やり方教えてやるから一回抜けよ」
 和泉くんは血の跡に動じもせずそれを乗り越えて来て、彼の側に屈みこんだ。
「お前もこんな状態でよく毎回生きてるよな、……そのうちショック死するんじゃねえ?」
「ッ……」 
 和泉くんは彼に話しかけながら、笑った。
 抜け、と指示されたので腰を引くと、彼の中がより一層強く締め付けてくる。 
 伝わってくる震えから、怯えているのだと判った。
 ゆっくりと抜き出してみると、血まみれの性器と共にどろりと濁った血がそこから溢れ出した。
「……イッ、いたい!……止めッ、和泉ッ!」
 高い悲鳴が上がる。
 和泉くんはそこに無造作に指を押し込み、中を掻きまわしているようだった。 
「中グチャグチャじゃねーか。……オイ、一回スキャンして怪我を戻せ」
「……」 
 無言で首を傾げ、それから和泉くんの言う通りにスキャンした。
 血だらけで泣いていた彼の身体が元通りの白く滑らかな肌に戻っていく。
 それを見て和泉くんは満足そうに頷いてから、その華奢な身体を抱き上げた。
「ココは本来入れる場所じゃねーんだから、慣らしてからやれよ。……お前もキツイだろ」
 床に座った和泉くんは背後から彼を抱き締めて膝に乗せ、こちらへ向けて両足を開かせた。
「!? な、……!」
 痛みの余韻を引き摺っていたのか反応の遅れた彼の顔が、羞恥に薄赤く染まる。
 開かせた太股を両側に引いているせいで、腰がこちらに突き出るような格好になっていた。
「どう、したらいい?」
「濡らして慣らすんだ」
 問いかけには即答で返された。
 濡らすと言われてもここには水も用意していない。
 再び首を傾げると、舌で舐めてみろ、と指示される。
「舐めて、指で開いてみろ」
 なるほど、それなら判った。
 彼の腰のあたりに屈みこんで、竦んだように縮まっている入口を舌で舐める。
 ぴちゃ、ぴちゃ、と音がする度に彼の真っ白な太股が淡いピンクに染まっていく。
「嫌だッ……きもちわるいッ!」
 彼は首を振ってまた泣き出した。
 泣いてるよ、と窺うように和泉くんを見ると、片眉を僅かに上げていた。
「馴れれば別の意味で泣くようになるさ」
 和泉くんは彼の小さな尻に手をかけて、そこをさらに割った。
 舐めていた入口が綻んで、僅かに口を開ける。
「っ!……ひ、ヤ、やあっ」
 隙間に舌をねじ込むようにして唾液を送り込むと、そこがヒクヒクと震える。
 悲鳴のような彼の声を聞きながら、無心にそこに舌を這わせ濡らしていく。
「……余程好きなんだな、お前」
 和泉くんが呟いた。
 視線を上げると、呆れたような表情でこちらを見ている。
「すき?」
「這い蹲って舐めてやる程、こいつの事が好きなんだろ?」
 和泉くんは問いかけながら指を窄まりに飲み込ませ、両側からそこを開いた。
 口を開けたその真っ赤な内壁を舐め、ぴちゃぴちゃと唾液を滴らせる。
「ひっ、く……っんん」
 拘束されたまましゃくり上げる彼の姿を見ていると、ああまた違う表情を見る事が出来たと嬉しくなる。
「……そうだね、きっと」
 鼻先がぶつかるほど舌を押しこみ、丁寧に舐めて広げていく。
 そこは怯えて震えながらもだんだんと柔らかく緩んできた。
「……変な奴」
 和泉くんはまた呆れたように呟き、唇の端を上げて笑った。
「こんな生意気なガキに惚れるなんてな。……まあ、泣き顔は悪くないが」
 いい顔するじゃないか、と言いながら彼の顔を覗き込むのを見上げ、無心に舌を動かす。
 そうだ、和泉くんは彼とは仲良く無かった。
 むしろいがみ合っていたと言っても過言じゃない。
 和泉くんは優秀で戦い方も慣れていて、周囲に頼りたいという人間が集まっていた。
 逆に彼は隠れたまま参加し、危険を嫌い、少しづつでも安全に点数を取ることを好んでいたから、いつも一人だった。
 和泉くん側の人間は、あからさまに彼を見下して臆病者と罵っていた。
 たまに和泉くんもその言葉に乗っていたから、彼の事が嫌いなのだと思っていた。
 でも今は、……。
「痛いばっかりじゃないだろ、……西」
 囁くように言った和泉くんが、彼の耳に歯を立てた。
 ビクンッ、と身体を竦めた彼の表情を覗き見て、和泉くんは楽しそうに笑っている。
「……この奥に、男でも感じる場所がある」
 ズ、と濡れそぼった内壁に和泉くんの長い指が埋まっていく。
 間近でそれを眺めながら、指の長さと中の移動距離を考えていた。
「ああ、……ココだな」
 指を押しこむのを止めて、和泉くんが呟いた。
 その腕の中で泣き疲れてぐったりとしていた彼が、瞬間、目を開く。
「ッや、あああぁぁっ!!」
 ガクガクと震えながら、彼は半狂乱になって頭を横に振った。
 和泉くんの指は二本、中を広げるように埋まっていた。
 それが擦るように上下すると、入口がぎゅっと締まる。
「これが、イイ場所だ。慣らして、ココを突いてやればこいつも痛みで泣くだけじゃなく善がるだろ」
 ほら、と促すように言って和泉くんが指を引き抜いた。
 僅かな時間弄られただけで、彼の性器は頭を擡げている。
 それをこちらに晒しているのが恥ずかしいようで、頬を染めて俯いていた。
「……西くん」
 伏せていた身体を起こして声をかけると、怯えたようにその瞳が揺らぐ。
 堪えきれない衝動が沸き上がって、気がついたら彼の太股を片手で押し上げ、先程の血まみれのままの性器を突き立てていた。
 柔らかくなっていた中は滑りが良く、奥まで一気に飲み込まれていく。
「ひっ、……ヤ、いた、ッ!」
「馬鹿がっつくな! 聞いてんのかハゲ!」
 ゴン、と頭を叩かれて我に返る。
 そういえば何だったか、と思いながら腰を引き、『その場所』を探した。
「は、……は、ぅ、……っんんッ」
 ゆるゆると抜き、探るように腰を進めた。
 その先に少し触れる感覚があって、そこを擦った途端に中が強く締まった。
「……ここ?」
「ヤ、ちがっ……止、め……ッ」
「勃ってるからビンゴだろうな」
 否定の言葉より、和泉くんの言葉を信じてまたそこを突いた。
 中がぎゅっと締まる。先程和泉くんがそこに触れた時、入口が締まっていたのを思い出した。
「ここ……いい?」
「ん、やッ……いやだ! そこ、やッ!!」 
 悲鳴に近い喘ぎ声を上げていた彼が、一瞬息を止めた。
 見ると、和泉くんが彼の性器を片手で扱いている。
 完全に勃起したそれは先端から透明な液体を溢れさせ、小さく震えていた。
「ずいぶん……イイみたいだな」
 からかうように言われて、彼は激しく首を横に振った。
 睨みつけるように和泉くんを振り返り、何か言おうとするが言葉にならない。
 唇から漏れるのは吐息と、快感の喘ぎだけだった。
 その下では腰を打ちつけるのを止めず、見つけたポイントを執拗に擦り続ける。
「ッー!!」
 声にならない悲鳴を上げて、彼が和泉くんの手を濡らした。
 白濁がぽたぽたと床に散って、フローリングを斑にしていく。
「……何だ、掘られながらイッたの始めてか?」
 和泉くんは笑って、呼吸を乱しながら放心している彼の顔を覗き込んだ。
「その割には善がってたじゃないか。……こっちの才能あんじゃねーの」
 新しい涙を溢れさせながらしゃくり上げる彼を、和泉くんが追い詰めていく。
 泣きながら恥ずかしがる彼を見たのは初めてだった。
 もっといろんな表情が見たいと思う。
「……西くん」
 こっち見て、と思いながら声をかけると、彼は涙を拭いながらこちらを見上げる。
 その視線に既視感を覚えた。
 無人の部屋で一人、こちらを……彼が『ガンツ』と呼ぶ黒い玉の表面を眺めていた時の目だ。
 たった一人で戦いに身を置き、それでも無垢で、……彼自身の素が剥き出しになった瞬間の瞳だった。
 その時自分は魅入られた。そのまま彼に捕らえられた。 
 どうしても、その存在が気にかかってしまった。


 彼がまだこの部屋へ来たばかりの頃は、とても緊張していて周囲を警戒し続け、まともな会話が出来そうもなかった。
 それが、人が死にメンバーが減ったり増えたりを繰り返す中で、慎重な彼だけは常に生き残るようになっていた。
『生きるのも死ぬのも一緒なんだ、ガンツ』
 彼はメンバー皆が望む元の生活こそを憂いているようだった。
 ミッションが終わっても部屋に残っていることが多く、飽きずに部屋の真ん中に座ってこちらを見ていた。
 話しかけたのは気まぐれだった。
 ミッション以外で現れるメッセージを初めて見た彼は、嬉しそうにこちらに語りかけ始めた。
 それから、時折パソコンを持ち込んで遊んでもいた。
 彼は色んな事を調べ、それをまとめてHPにしていた。
 たまに向けられる問いには、答えられるものは答え、秘密なことはただ無言で通す。そんな会話を続けながら数カ月が経った。
 いつの間にか、自分が彼との会話を楽しんでいることに気がついた。
 それを自覚した後はただ、触れたいと願った。
 実行したのはそう考えた次のミッションの後だ。
 玉の中から突然外に出てきたのを見て、驚いた彼は一瞬声も出ないようだった。
『ガンツ、……お前、外に出られたのか』
 戸惑いながら問いかけてくる彼の前へ進むと、その瞳に僅かに怯えが走った。
 彼にとって話しかけていた『ガンツ』は黒い玉の姿だけで、お前は違うのだと言われた気がした。
 瞬間、湧き上がったのは衝動だった。
 驚いて逃げる彼を捕まえ、スーツを壊し床に押さえつけた。
 恐怖で混乱する彼の表情を、その時初めて間近に見た。
 自分の中で欲望が膨れ上がるのを感じた。
 抑えきれない欲求をただぶつけるようにして彼を犯した。
 腰を打ちつける度に中から血が溢れ、彼は声が出なくなるまで悲鳴を上げ続けた。
 気を失ってしまっても抜き差しを続けていたら、その衝撃で目を覚ますというのを繰り返していた。
 漸く熱が治まって部屋を見ると、床は血まみれだった。
 下半身を血に染めたまま横たわる彼の目はうつろで痛々しかった。
 その身体をスキャンして全ての傷を元通りにすると、彼は我に返ってすぐ部屋から飛び出して行った。
 家に帰るまでに駅のトイレで二度吐いたのも知っている。
 彼は恐らく今まで非常に潔癖で、こんな行為を強要された事などないのだろうと思った。
 それからは、ミッションの度に彼を犯した。
 採点の間部屋の隅にいる彼は、小刻みに震えながらこちらを見ていた。
 逃げようとするとマンションの扉は開かず、他のメンバーも外へは出られない。
 彼が大人しく部屋に戻って初めて、玄関を開けるようにした。
 もう彼は、前のように語りかけてくる事はなかった。
 でもそのかわり別の表情を見せてくれるようになる。
 怯えて、泣いて、許しを乞う、そんな姿を見ていたらもっとという衝動を抑えきれなかった。

 自分は彼を好きなのだと、和泉くんに言われてようやく気がついた。

「西くん」
「ぁ、……ッ!」
 声を堪えて噛み締める唇を、指先でこじ開けた。
 ギリッと噛みつかれて指先に血が滲む。
 けれど、彼は声も喘ぎも抑える事はできなくなった。
「あ、っあ……ッ、ヤ、ッん、んん」
 和泉くんの言う通り、解れた中に突き入れてその場所を狙って突くだけで、彼の反応はまるで違った。
 青ざめていた頬は薄赤く染まり、潤んだ目から涙の粒が伝っていた。
 僅かに自分から腰を揺らすようにもなった。
 それを自覚すると余計に羞恥を感じるようで、彼はまた嫌だと言って泣いた。
「……今度ジェル持ってきてやるから俺にもやらせろよ」
 彼をうつ伏せにして腰を上げさせ、後ろから犯している時に和泉くんが言った。
 見ると、四つん這いになっている華奢な身体を前から弄っていた。
「……西くんがそれでいいなら」
 そう答えると、和泉くんは意外そうに眉を上げて、それからいつものように笑った。










2011/05/18

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