君の予感にお見舞い。  真凛

嫌な予感はしてた。

胸がざわつくような黒い雲がもやもやとかかるような


漠然とした、でも、とてもはっきりとした


何かが変わるような予感。 



俺はそれに耐えきれなくて

「あれ?先輩どこかいくんですか?」

同室の似鳥に聞かれ

「トレーニング」

と、少し素っ気なくかつシンプルに答え
部屋のドアを閉めた。




「っは、っはぁ、っは…」

一定のリズムを刻みながら
足を進める。


「…っはぁ…………」

一通り走った後
水分を取ろうと近くのコンビニに入る。

キャップをかぶり下を向いていたせいか
ウィン、と音を立てて開いたドアから
出てきた人とぶつかってしまった。

「っと、すいませ…」
「わわっ…、あっ、すいま…せ…凛…」

「真琴……」





コンビニでスポドリを買ってから
俺は真琴とコンビニの近くのベンチに座っていた。

「凛はまたトレーニングで走ってたの?」
「ん」
「こんな時間に危ないよ?」
首をかしげて不安そうに言う真琴は
ときどき、こいつほんとに男か?
と思うほどオカン気質というか、

もともとそうだが
俺らが同級生よりも上の関係になってからは
特に、だった。

「そういうお前は何しに来たんだよ」

「ん?俺?
蘭がぐずっちゃってね」

そういうとお決まりの

「そういえば昨日ハルがね、」

が始まった。




それから真琴のハル話は
果てしなく続いた。

ように思えたほど
俺にとっては苦痛の時間に過ぎなかった。


「でね、そのときハルが珍しく甘えてきて」

ほとんど話を聞き流していた俺も
思わず聞き返してしまった。

「甘え…た?」

「うん、そう。珍しいぶんすっごい
嬉しくてさ、渚に、バカップル、って言われちゃったんだよ」


…なんなんだろう、こいつ。
何がしたいんだ?それを言って俺にどうしてほしいんだよ。
お前らの惚気話を恋人の俺の前で言って何になるんだよ。



ああ、もう、つかれた



「ちょっと凛、聞いてる?」

「…んだよ…」

「…凛?」


「なんだよ…なんなんだよッ!!
電話してきたと思えばハルハルハルハル、
2人で話してるときもハルの話、
そんなにハルが好きならハルと付き合えよ!
お前の恋人は誰なんだよ!?俺じゃねぇのかよ!?」


もうやだ


そう言うために口を開こうとしたところで
真琴の逞しい腕が俺の背中に回っていることに
気づいた。

「…ほかは?」

「え…?」
真琴の言っている意味がよくわからなくて
顔を上げると

「ほかに、言いたいこと、
全部言って?…ね?」

優しい笑顔が待っていて。

ぎりぎりのところで止めていた涙が
ボロボロと溢れ出した。

「ハルのっ、話っ、ばっかすんなっ…っ」
「うん、あとは?」
「んっ…、俺っ、意外の奴にっ、いっぱい、やさしくしちゃっ
やだ…」
「うん、ほかは?」
「…っ、もっと、いっぱい、会いたい…っ」








「なんてこともあったねぇ…」

しみじみと言う真琴に
俺の黄金の右ストレートをお見舞いしてやった。

「いっったいよ〜…」
「うっるせぇ!恥ずかしいことべらべらしゃべんなっ!」
「なんだよー、そんなに照れなくても…」
「む…」

ナチュラリーな上から目線の真琴に
せめてもの反抗として


「んっ!?」
「へっ、そんなに照れんなよ、まーこちゃん」
「〜〜っ」

キスをお見舞いしてやった。



Fin

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