今日という日は  御子凛

今日という日は

朝起きた時から自分でも驚くほど
体が気怠かった。

原因は、多分、あれだろう。



そんな日に限ってこの人は。


「松岡」

うるさい。

「まーつおか」

うるさい。

「…まーつーおーかー」

「…なんスか」

この口うるさい部長はなにかと俺に構ってくる。

「お前なぁ…、彼氏に対してその態度はちとひどくないか?」

なにをいまさら。

「別に、今に始まったことじゃないでしょう」

「ったく」

ふん、とそっぽを向いてみせると
口うるさい部長も比較的潔く諦めてくれた。

「あ、そうだ」

ふと、思い出したように部長が話し出した。
と思えば俺の顔をまじまじと見つめてくる。

「…だから、なんですか!」

「んー…、うーーん…………。んー…。」

はっきりしない部長の態度にイライラしつつ
部長の答えを待つ。

「あの、さ。うん。なんというかだな」

「?」
なんなんだ、この人は。

「お前さ、今日、だるくないか?」

少し眉を下げて下からのぞき込むようにそう聞かれる。
その仕草に少なからずキュンときてしま…、じゃなくて


なんでわかった?


似鳥か。

いや違うな。俺はあいつに言ってない。

じゃあ


じゃあなぜ?

「なんでスか」

率直に質問をぶつけてみた。

「なんでって…、だって、当たり前だろ?」

不思議そうな顔をしてこの天然たらしはこう続けた。


彼氏なんだから。



それに、と部長は言葉を続ける。

「俺が昨日の夜、無理させたからだろ?」

ぐっ、と俺との距離を詰め

「悪い…。」

…。


「やっ、あ、あの、〜〜っ、もういいですっ!」

俺は全速力でその場から逃げ去った。
後ろから焦った部長の声が聞こえたけど
そんな余裕はもうなかった。

自分の真っ赤すぎる顔を見られたくないせいと


あの言葉の後には多分、

昨日と同じ行為をねだる言葉が


続くはずだから。





Fin

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