いつもの。  音トキ

「音也」

「んー?」

「この手はなんですか」

「んー」


話聞いてないですよね

そう言おうとして口をつぐむ。


どうせまた適当な返事で返されるのだろう。



ソファに座る私の後ろで
私の腰に手を回す音也。

この状況ができたのはつい先ほど。


先ほどから
「離せ」
「んー」
「は・な・せ」
「んー」
「…離せっつってんでしょうが」
「んー」


なんか…、思い返してみると…


こいつ、拗ねてる…?


「音也」

「んー?」

「なんか拗ねてます?」

「…別に」



拗ねてる。


何かしただろうか。

いやしてない。



こういう時に意固地になる音也はたぶん
もうしばらくこの体制でいる気だろう。


どうするか。

そう考えた時に一番得策だと思われた行動。
それは

音也のほうに向きなおって
物事を進める。

…まぁ…、やってみる価値ぐらいは…。

そう思い
音也のほうに向きなおり

「音也、言ってくれないと
わかりません。」

「…ゎっ…」

驚いたように目を見開く音也。


…ワンテンポ遅れて
自分も驚き…


照れた。←


音也のほうに向きなおる

ということは

音也に抱きかかえられているような状態になるわけで。




「かっ、勘違いしないでください!
私は決して…!」
「トキヤ…」
「っ…?」

「今日一緒に歩いてた女の子、誰?」



「へ」

ずいぶん間抜けな声が出た。

「へ、じゃなくてっ!」

「あれは…」

ここまで言って思いついた。


いつもやられているお返し。


「誰だと思います?」

「………」

「音也?」

「………」

「…おとや…っンっ」

いきなりの口づけ。

されたと気づいたと同時に舌が入ってくる。

「ンっ…っはぁ…んんぅ…お…とや…ぁ…っ」

くちゅくちゅと厭らしい音だけが
響く部屋。

「っは…んぅっ…ンッ、おッ…とや!」

大きい声で名前を呼ぶと
重なっていた唇は離れた。

「なんなんですか急に」

「…別に」


はぁ…。

本当にいつもいつも…。


あきれ顔を外に出さないよう
気を付けながら

音也の両頬を手のひらで包み込み

「私はあなた以外興味ありませんから」





いつものように

耳元で囁く。




こう言わせる技術だけ伸びやがって。


Fin

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