溜め息で吹き消す灯り
別にいいんじゃない?適当に流しておけばいいんだし。
別に学校の中の生活が自分の世界の全てじゃないし、変わってるとか言われても気にしない。
一人ぼっちでも周りに合わせて無理するくらいならその方がいいじゃん。
「ミョウジチャンさァ。別にィーとか仕方ないとかよく使うよネ。」
「そうかもね。」
荒北靖友は見た目の割に面倒見が良く親切な男だ。クラスの中で所謂ぼっちの私の数少ない話し相手で、放課後部活が始まるまでの時間誰も居なくなった教室でこうして駄弁るのが私たちの日課だ。
「それってさ、やっぱり現状に納得してねェからなんじゃねーの?そうやって、クラスの奴らに合わせるのしんどいしでも一人で居るのも嫌なんじゃね?」
「そりゃ、寂しいって気持ちもあるけどさー。てか、そう言う荒北はどうなのさ。」
俺には福ちゃんが居るからネ。
荒北は頭をガシガシ掻きながら窓の外を眺めた。彼が目を逸らすときは大体恥ずかしいのだ。
「荒北ってぼっちじゃなかったんだね。」
「ッセ!」
無害な言葉を並べて面白くもないのに笑ってなんて居られないんだよね。だって私そこまで器用じゃないんだよ。言いたい事沢山あるし、でもなんかもう喋るの疲れたし諦めたからいいかな?って思っちゃうんだよね。
「嫌んなっちゃうなぁ、ほんともう。」
自分から周りに壁つくって一人でいるだけなのに一人ぼっち寂しいとか自分勝手だよね、解ってるよ。ほんと言い訳ばかり。
ツラツラ口から溢れてくるマイナスな言葉を荒北は聞いているのかいないのか分からないけど窓の外をじっと見つめたままで私はいたたまれなくなってなんだか泣きそうになった。
ごめんね、と俯くと荒北の大きい手が乱雑に頭を撫でた。
「メンドクセェーから泣かないでくんナァイ?」
「荒北は優しい。」
「はぁ?」
だって、いつも暇だって言いながら私の話に付き合ってくれるよね。でも私だって知ってるんだよ。自転車部の部室って福富くんがいつも早い時間に来てるからわざわざ待たなくても何時も開いてるんだよね。
「別に、ナマエチャンの為じゃねェよ。俺がいつ部活行こうが勝手だろーが。」
荒北は顔を真っ赤にしながらそんなことを言った。
「でも、荒北は優しいよ。」
「ナマエチャンさァ。俺の事買い被り過ぎだヨ。俺がなんでわざわざ同じクラスってだけの女の子と毎日毎日放課後駄弁ってると思ってんの?」
そんなこと考えた事も無かった。そもそも、放課後こうして話すようになったのも忘れ物をしたと教室に入ってきた彼と少し話した事がきっかけでそれから荒北が何かと話しかけてきてくれるようになったのだった。
固まる私に荒北は痺れを切らしたのか机越しにぐっと身を乗り出して耳元まで唇を寄せた。
「好きだつッてんだヨ。」
低く囁く声にもう、私は何もかも考えられなくて無意識に視線を彼の顔と向けると噛みつくように口付けられてついに彼の真っ赤な顔も見れなくなった。
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