イノチミジカシ | ナノ
▼毎日はすごいはやさで






風俗嬢になったのは丁度一年ほど前で、その前にも援助交際で得た金で生計を立てていたから大して抵抗も無かった。
むしろ、今の仕事の方が守ってもらえるのだからマシな気もする。

明け方、仕事が終わると私は何度も歯を磨く、うがいをする。家に帰るまで我慢できずに駅のトイレの個室に座り込んで何度も何度も腹の中身を出すと少しだけ身体が軽くなる。

毎日は凄い早さで過ぎ去っていって、この一年どうして過ごしていたのか全く思い出せないし、これからも時間はそのスピードを維持して走り続けるから私もすぐにおばさんになってしまうのだろうけど長生きするも無いから今日も眈々と生きていこう。

始発に乗って部屋に戻ると居間に馬鹿が一人テレビも付けっぱなしで寝転んでいた。

そいつは一応のところ私の男と言うことになっているのだが、酔った拍子に一度寝ただけで名前も思い出せないので、心の中で私はこいつを馬鹿と呼んでいる。

この馬鹿が私は嫌いだ。日がな一日部屋に入り浸り、金をせびり暇をもて余せばセックスすることしか頭に無いまるで猿のような男で、なぜ私がそんな男を側に置いておくのかと言うと私のようなピンサロ嬢やソープ嬢に限らず男がいる方がなにかと都合が良いときもあるのだ。

馬鹿な男に尽くす馬鹿な女のふりをしておけば。

しかし、今日の私は最高潮に虫の居所が悪い。

馬鹿は私の存在に気付くとまるで当たり前のようにベッドに私を押し倒し事に及ぼうとし始めたのだ。

「ちょっと、重たいんだけど。」

なにが悲しくて仕事で疲れて帰ってきたばかりだと言うのにお前の息子の世話なんてしなければいけないのか、私はお前のダッチワイフじゃねぇんだぞ。この猿が、

心の中で毒吐いて、堪忍袋の緒が切れたのか、それとも日頃の不満が爆発したのか分からないけどそいつを突き飛ばしてベッドから降りて冷蔵庫からペットボトルを取り出して水を飲むと逆上した馬鹿に顔を殴られた。

鈍い音が脳内で鳴り響いて頭はぐわんぐわんと衝撃をそのまま伝達していく。

私はかなり頭に来て顔が熱かったけど今までになく冷静な言葉で、出ていけと馬鹿に命令してお前が出ていかないなら私が出てくと告げて玄関に向かった。

馬鹿は慌てたように裸足で玄関から出ようとする私の腕を掴んで部屋の中に押し戻そうとしたけれど、こいつの言うことなんて端から聞く気も無かったから近所迷惑極まりないが玄関での揉み合いになった。


「なあ、ごめんって。」

「離してくんない?てか、出てけよ。」

「取り敢えず中入ろうよ、な?」

「いや、触んないでくんない。彼氏面してんじゃねーよ。まず、あんたの名前すら覚えてないしさ。ほんと誰なんだよって感じなんだよね。だからさ、知らない人に自分の家に居座られておまけに殴られて中に入ろうよとか言われても、」

困るじゃん。と言おうとしたところもう一発殴られた。馬鹿は兎に角救いようもない馬鹿だったらしく髪の毛を鷲掴みにされ何度も顔を殴られた。
馬鹿はその途中なにかぶつぶつ喋っていたけど人語喋れない猿だから何言ってるか聞き取れないし漠然と自分は死ぬのかも知れないと思った。

今日の夕刊の三面の記事には間に合うだろう。風俗嬢、同居男性により撲殺みたいな。





bkm
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