イノチミジカシ | ナノ
▼アタシ、ワタシ


-子供の頃は好かった。-




幼い頃の夢を見た。大好きな赤色のランドセルに、休みの日には母親と大好きだった赤色のワンピースを着て地元のデパートに入っているファミレスでパンケーキを食べてた頃の幸せな自分。
今では自分はこんな様だから、母親と外食に行くことなどもう一生無いのかも知れない。

瞼を上げれば薄暗い汚れた天井に衣服の散乱した部屋が有るのみで少しだけ虚しくなった。

ベッドの隣に置かれた時計の針は丁度夕方の4時を指していて、冷たい床に足を着けると洗濯機から洗濯物を取り出すことにした。

空が暗くなる頃、仕事に向かうため鏡の前に座ると隈の浮かんだ疲れきった顔の女が目の前に浮かび上がった。
髪の毛を上げ、下地を塗ってコンシーラーで隈を隠し濃いメイクを施すと、幽霊みたいな女は目の前から消えて頭の軽そうな女が出来上がる。

胸元の開いたトップスにタイトなパンツに着替えて部屋を出ると、丁度最近隣の部屋に越してきたばかりの男が帰宅するところだった。
彼は中々強面な男で見るからにそっちの家業の人間に見えなくもないが大家によると普通の会社員らしい。
鍵穴に鍵を差し込む大きな男の手がその鍵とあまりにも大きさが違いすぎてまるで大きな熊が一生懸命民家の鍵を開けようとしているようで少しばかり可笑しくて見ていると彼は私の視線に気づいて軽く会釈をした。

熊に会釈をされたと思うと私は更に可笑しくて少しばかり笑みを浮かべながら会釈し、仕事場に向かうためその場を後にした。





bkm
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