数日

「お前の話が聞きたい。」
私が屋敷に住み始めて数日が経過した頃、私は真夜中ブランドーさんに呼び出された。
彼とは此処に住むことが決まった日以来会ってなくてまともに彼の顔を見るのはこれがはじめてだった。

「話、ってどんなことを?」

「なんでもいい。お前が話したいことを話せ。」

彼の部屋は相変わらず薄暗く近距離でしか彼の表情は確認できない。

「私を退屈させるなよ。」
どうやら彼は退屈していたらしい。


それからと言うもの、私は毎日彼の部屋に行って話をするようになった。

私の身の上や、病室で読んでいた本の話。
DIOさんはなかなか教養の深い人で、よく本の話で盛り上がった。

とく彼の部屋には沢山の蔵書があって、その隣には書庫もある。
それを知った最近では、私は専ら書庫で本を読み漁ってはブランドーさんに感想や見解などを聞かせるようになった。


「嗚呼、夜明けが近いな。」

「そうですね。そろそろお暇します。」


そう言って私は彼の部屋を出ようとする。
するとブランドーさんは思い出したように

「明日はテレンスと買い物に行ってこい。」

と言った。
「いつまでもそんな格好で彷徨かれても困る。」

今の私の格好は此処に来たときと同じ服だ。
クローゼットの中の服を適当に着回しているから、ブランドーさんは多分それを言いたいのだろう。

「女はもっと着飾るものだ。」

ブランドーさんは溜め息を吐きながら付け加えた。

「貴方は行かないんですか?」

「昼間は外に出れん。テレンスと行け。」

「はい。」

彼に服を見立てて貰いたかったので少し残念だった。

「また今度、外に連れていってやる。夜にな、」

少し気を使ってくれたのか、ブランドーさんはそう言って微笑した。

私は彼に就寝の挨拶を告げると自分の部屋に戻った。














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