赤と白と金色

テレンスさんが去った十数分後、部屋のドアのノックと共に男が入ってきた。
ヴァニラと言った人だ。
片手には救急箱を抱えている。

「足を見せろ。」

そう言うと彼はベッドに座る私の足を掴んで丁寧な仕草で靴を脱がせた。

「っ!痛い。」

今まで他のことばかり考えていたせいで傷付いた足のこと等すっかり忘れてしまっていた。

彼は救急箱から消毒液と包帯を取り出すと脱脂綿に消毒液を染み込ませ足を拭く。

「ねぇ、貴方名前は何て言うの?」

彼は最初答えなかったが、暫くして口を開いた。

「……ヴァニラ・アイス。」

「美味しそうな名前ね。私はアイザ。貴方どうして私の傷の手当てしてるの?」

「DIO様の命令だからだ。」

ヴァニラは私のことなどどうでもいいように答える。

「貴方はあの人の部下なの?」

「貴様に答える必要はない。殺されたくないなら口を閉じていろ。」

私の質問攻めにうんざりしたのか彼は早々に言い放つと手際よく足に包帯を巻いた。

見るからにプライドの高い彼が、あの人の命令一つで私のような何も知らない無知な小娘に跪き足の手当てをしている。
彼にとってブランドーさんはそれほどまでに大切な人物なのだ。

手当てが終わるとヴァニラは立ち上がり部屋を去る。
彼の背中に私は

「有り難う。」

とだけ言った。
彼は私に振り返ることなくドアを閉じると高い靴音を響かせ遠ざかっていった。

胸に手を当てる。欠陥品の心臓はまだ生きていたいと必死で叫びながら脈を打つ。

「やっぱり、生きてるんだなぁ。」

これから、どうしようか。
どうしようもないが、

ただどこまでも白い病室よりも、この部屋の方が数段華やかであることは間違いない。

今ある状況を楽しもう。
外に出てからの私は随分明るく楽観的になったものだ。

一人で苦笑する私を金色の朝陽が包みこんだ。










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