愉しげな人

男の人は物凄いスピードで走っていったと思ったら物凄いスピードで戻ってきた。
しかも息ひとつ切らしていない、そしてなんか嬉しそう。

「これを履け。」

彼は片手に持っていたものを私に手渡す。
赤いリボンのついたミュールだった。

「有り難う、」

渡された靴を素直に履くと彼は私についてこい、と顔で示す。

「あの、此処は何処なんですか?私はどうなるんです?」

前を歩く彼は私の質問に答える気はないのかただ無言で長い廊下を歩き続ける。

「ねぇってば、聞いてますか。」

「ある方に会ってもらう。貴様をどうするかはあの方次第だ。」

彼は立ち止まると私を睨み付けこうとも言った。

「あの方に失礼な態度をとったら、私が貴様を殺す。」

私は何故自分が彼に脅されているかよくわからずまた歩き出した彼の背中を訝しげな目で見つめた。


彼はとある一室で足を止めた。
ドアをノックすると

「入れ。」

と言う言葉。何処かで聞いたことのある声だ。
彼は恭しくドアを開けると私に先に入るよう促す。

部屋の中には先日意識を失う前出会った彼がいた。

「ヴァニラ。下がっていいぞ。」

「はい。」

男はヴァニラと言う名前らしかった。
なんだか美味しそうな名前だ。

「名は何と言う?」

「え?あ、 アイザ です。」
椅子に優雅に座る彼は紅茶を啜る。

「あの、貴方が倒れた私を此処まで?」

「そうだ。」

「有り難うございます。お陰で死なずにすみました。貴方のお名前は?」

「ディオ・ブランドーだ。」

「何故私を此処に。」

「貴様は、質問ばかりだな。」

ブランドーさんは何故か可笑しそうにクツクツと喉で笑う。

「何か、可笑しいですか?」

「このDIOに臆せず質問してくる輩が居るとは。」

彼の口角がゆっくり上がるにつれ私言い様のない不安に襲われた。彼は私をどうする気なのだろう。

「始めは喰ってしまおうかと思ったが、気が変わった。 アイザ 、貴様は此処に住め。」

「はい?」

言ってることがよくわからない。喰うってこの人人を食べるの?

「テレンス。」

「はい。」

私が硬直しているとブランドーさんがまた誰かを呼び出す。
現れたのはスーツ姿の男の人。

「この者の世話をしてやれ。」

「畏まりました。参りましょう。」

男の人が私の腕を引く。

「え、ちょ、」

「 アイザ 、精々私を楽しませろ。」


ブランドーさんは酷く楽しげに笑う。
そして私は男の人に連れられ部屋を出た。









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