「なるほどな……。それにしてもよく、許したな、感心するよ」
「……ボクで遊んでいますよね?ワタルさん」
なぜか帰り道にワタルさんに声をかけられた。一緒に飲まないか、そんなぐあいに。それまで一言も話さなかったくせに…。ミクリの体調不良は仕方ないにしても、あの話になるくらいなら、来ない方がよかったんじゃないかとさえ思った。
「イッシュにいた時かなこちゃん…、泣いていたよな?喧嘩でもしたのかい?」
「あれは、互いの勘違いだったので…」
「けど…、ミクリくんがかなこちゃんを気にかけてるようだったから、心配になってね…」
「心配…?」
なぜ心配する必要があるんだろう。ミクリがかなこちゃんを気に入っている事は、他の地方のチャンピオンは知らないはずなんだけどな…?
「……いや。おれの勘違いかもしれない。けど、初めの挨拶のときから彼、かなこちゃんにぴったりくっついてたから……」
「ぴったり、とは…?」
ワタルさんは、かなこちゃんを見るミクリの目が、チャンピオンを称えるのとはまるで違っていたと言う。それを言うなら…、ワタルさんだって、かなこちゃんに好意を持っているのは明らかだろ?
「詳しいことはわからないけどな、具合悪そうに会場を後にしたかなこちゃんをミクリくんが追っていったから、何だか気になってな」
「……そう、だったんですか…」
ミクリがかなこちゃんを襲っていたあの日。事の真相まではボクは知らない。彼女も話さないし、互いにそのことは水に流そうと誓ったから。だが…、かなこちゃんに触れたときの反応は、明らかにボクの与えた愛撫から来るものとは違っていて、正直、今でもショックを隠せない。