*幼なじみ*
「すごい!レッド!すごい!」
マサラタウンで再会したレッドにポケモン勝負を挑むも、あっさり返り討ちにあった。もうただの幼なじみなんかじゃなく、強者感が半端ない。
「別にぼくは、そんなつもりないんだけどな…」
「いいのいいの!あたしが崇めたいだけだから」
かなこの笑顔は眩しい。それが=恋というわけではないが、見ていて男として悪い気はしない。二人の異なる思いは静かに溶け合い、居心地のよさを作り出す。
「いよいよ、行こうと思ってるんだ」
「あたしも行ってもいい?」
「かなこは8つめのジムがあるだろ」
「うん、そうだった」
気を遣わなくていい存在。それだけで、特別な気がした。
「よお、かなこ!」
どのくらい待てばいいのか、トキワシティに来ては何度も離れるのを繰り返す。そこへふらりこちらも旅人だろうか…、グリーンが顔を出す。
「……そうか」
思いがけず真剣な声にパッと顔を上げた。そう呟いたグリーンの表情は、どこか吹っ切れたように晴れやかだった。レッドのポケモン図鑑完成が迫っていると聞けば、おれたちも頑張ろうぜと前向き。道中散々突っかかってきたのが嘘のように、穏やかだった。
「グリーン、なんか大人しくなったね?」
「はぁ?おれさまはいつでも大人しいんだよ!まあ…、大人に近づいたってことじゃね?」
これから先、どんな風に変わっていくかはわからない。だが…、この時に感じた、幼なじみの存在を忘れないように、深く心に刻んだ。