「かなこが……、何か言ってたのかよ……」
「いや?かなこはあんたのことなんか言ってなかったよ。それより、あたいのでよけりゃ、飲んどきな」
プルメリもグズマ同様トレーナーの道を選んだ。道中何があってもいいように、常に薬は持っているのだと言う。
「助かるぜ……さすがはプルメリ……」
「ハンッ!褒めても何も出ないよ!」
グズマに好意を寄せていた者のひとりとしては少々フクザツだが、かなこは自分にとっても大切な存在。そんな二人がくっつくなら、素直に祝福してやりたい。
「かなこと、仲良くね?」
「ああ……」
かろうじてプルメリの方に目線を送るも、見送りは要らないよと言われてしまえば引き止めようがないが。
「ああでも……、せっかくだから、あんたの弱ってる姿でも拝んでおこうかねえ」
「………」
ふわりとかなことはまた違った香りが鼻を掠めた。身体が弱ると普段敏感にならない部分の感覚が活性化されるのかも知れない、何となくそう思った。そう思うと同時に手を伸ばしかけたが、慌てて引っ込めた。
「何さあんた……あたいにしときゃよかったとか思ってんじゃないだろうね」
「さあなぁ?それよりおまえ……初めて男に抱かれた時、どう思ったよ」
「……っ、はぁ!?」
いきなり何言い出すんだこの病人、そう思った。風邪引いて頭おかしくなっちまってんのか?そんな具合に。
「あ、あたいのことなんかどうでもいいんだよ!それより、かなこにひどいことしたらあたいが黙ってないからな!」
力なく微笑した。程なくしてプルメリが帰るとまた部屋は静かになった。上がってきた熱が下がることを願い薬を口に含むと、ゆっくりと目を閉じるのだった。