「……おまえはポケモンセンターにでも泊まってけ」
「え?グズマさんは?」
「オレさまはモーテルに戻るからよ」
「……っ、でも……、あたしもグズマさんと………」
この女はいとも簡単に自分の理性をブッ壊そうとしてきやがる。そう思うもそんなに悲しそうな目で見つめられては、置いてきぼりにすることもできない。モーテルに帰り、風呂を促し、ひとりエネココアを飲みながらぼんやりしていた。
(あいつ……何考えてやがる……)
彼女の考えることすらわからないとは悲しいものではあるが、男と女では考え方が違う。あとで後悔しても遅いのである。
「眠かったら先に寝とけよ、かなこ。オレさまはまだやることがあるからよ」
「はぁーい……」
あくびしながら返事をする姿に少しホッとした。大人びた服や大胆なことを言ったところで、所詮はまだ少女なのだ、と。風呂から上がった時には案の定眠っていて、安らかな笑顔をそっと眺めてみる。
(可愛い顔してんじゃねえか)
純粋無垢な表情。それがかえってオスの本能を甘く刺激する。誘われるかのようにそっと唇を合わせると、目を瞑ったまま満足げに微笑むかなこ。これが愛しいということなのだろうか。数日後、実家から二人が出ていくと聞き、グズマは元の家に移り住むことになったとかなこに報告した。
「グズマァ!!何やってるんだああ!!」
久しぶりにアローラ地方に青年の大声が響き渡ったという。ことの発端は今朝。
「おはよう、グズマさん……ってあれ!?あたし、ベッド独占しちゃって……」
昨日、ホクラニ岳でキスした時の感覚が甦ってマトモに目を合わせられない。そんなかなことは裏腹にいつもと変わらない様子……のはずのグズマがなぜか、部屋の端っこで小さくなっていた。
「どうしたんですか?グズマさん」
「……お、おう。起きてたのかよ」
「そりゃ起きてますよ!もう、お昼近いですよ?」
うーん、と背伸びをするかなこの身体に目がいってしまい、バトルツリーのオヤジと何ら変わらねえじゃねえか、と突っ込みを入れる。このまま部屋にいたら事故でも起こしかねない、そう思えば自然と外に連れ出していた…が。