「グズマさん!遊びに来ちゃいました!」
グズマの中で変な気持ちが芽生えてから。突然かなこがモーテルにやって来た。その服は以前ビーチサイドで見たもので、また余計な記憶が甦る。
「とりあえず入れや、そんなところで突っ立ってんのもなんだからな」
なるべく平静を装ってかなこに話しかける。一方のかなこはそれに全く気づいていないようで、こんな話をしてくる。
「グズマさん……あたし、本当にグズマさんの彼女なんですかねぇ……」
「……何だよいきなり。そうだって言ってるじゃねえか」
「でも、でもですよ!?その……、恋人っぽいこと、何ひとつしてないなぁって、そう、思いまして」
「………」
かなこが望むなら、そうも思う。だが、それはあくまでいい流れからであって。そんな風に意外にもロマンチックに考えるグズマはふと、かなこを外に連れ出した。
「……ここからだと、星がよく見える。……ってな、おまえも島巡りしたんだからわかってるよな、それくらい」
「……はい、でも、グズマさんが選んでくれた場所なら、デートはどこでもいいんです」
積極的な発言をしたかと思えばこんなに可愛いことを言ってくる。バトルの時は男勝りで少々怖いが、離れてみれば普通の女の子。最近はその女らしさとやらに磨きがかかっているもんだから、下心を抑える術が見当たらない。
「かなこ……目、閉じろや……」
「はい……」
少しだけ砂のにおいが混じるこの場所で。柔らかく触れあうだけの初めてのキスが、かなこの唇に落とされた。