「かなこさん!買い物につき合ってください!」
突然のリーリエの申し出に快く返事をした。聞けばデートに使う服を選びたいのだと言う。
「へえーっ!リーリエもデート?そっかあ、じゃあ、二人でいろいろ選ぼう!」
「はい!……と、言いたいところですが……」
言い淀むリーリエの視線の先をたどると、グラジオがいた。ひどく不機嫌そうである。
「グラジオ、帰ってたんだね!」
「ああ……それより帰ってくるなりリーリエがデートすると聞かされたオレの身にもなってくれ……」
過保護だなあ、そんな風に他愛ない会話をしたのは何時ぶりだろうか。グラジオが帰ってきてからそれなりに時間は経っていたが、新たなモーテルを探したりいろいろしていて、久しぶりにリーリエに会えばそんな展開になっていたらしい。
「兄さまがダメ出しした服は買えないんです……ですがかなこさん!かなこさんがいればきっと、素敵な服が見つかると思うんです!」
リーリエの目はキラキラ輝いていて、応援してあげたいな、自然とそんな気持ちにさせられた。まずはハウオリシティから順に回っていくも、
「それはダメだ。露出が多すぎる」
「悪くはないが……、相手に誤解されないか心配だ」
という具合に容赦ないダメ出しが続く。更に、
「かなこにはまだ早いだろ……やめておけ」
「……えぇ!?何であたしにもダメ出し!?」
そう言うとグズマさんに会う服だろ、そう返ってくる。グラジオの中ではよっぽどグズマに負かされたのが堪えたらしい……危ない男だから気をつけろ、とか説教じみたことを言い始める。
「兄さま……わたしたちはこの服を買ってきます、ここで待っていてください」
「あ、ああ………」
さすがに下着コーナーの前でそう言われては着いていくわけにもいかない。中には堂々と着いていく男性もいると言うが、年頃のグラジオには何だか気恥ずかしかった。
(それに……妹の下着姿を見るとか、ないだろ……)
そんな風に思っていたという。
「これで、邪魔者はいなくなりました!さっきの服たちを買いに行きましょう!」
なかなかリーリエは怖い女の子だ……かなこはこの時初めて、いや……ポータウンの時にも思ったが、そう感じたと言う。