「いよいよ童貞卒業っすか?グズマさん!」
「……しっ!声がでけえよ、馬鹿」
久しぶりにポータウンの屋敷に戻ってきた。自分の部屋を片づけて、ある程度の荷物をまとめ帰ろうと歩いていたところ、元子分たちに偶然出会った。 聞けば世間とは広いようで狭いらしい、グズマとかなこがつき合い始めたことは瞬く間に広まったという。
「早くかなことやっちゃったらどうっすか、それくらいチョロいもんでしょ」
「……てめえ、オレさまがいつ童貞だなんて言った」
「そのくらい、日常見てりゃわかりやすって」
交際すら初めてであるグズマにも段階という知識はあるわけで、いきなりそんなことできるか!と怒ればへらへらと笑っていた。二人はスカル団に入団する前にそういうことは経験しているだけに、初な頭をからかっているだけ……なのかも知れないが。
「まあ何にしても、グズマさんがマトモな人でよかったっすよ」
「はあ!?どういう意味だよそれ」
「だって、グズマさん、ルザミーネさんにゾッコンだったじゃないすか」
「……ちっ」
代表とはそんなんじゃねえ、一際低い声で言えばさすがに空気を察したのか、大人しくなった。
「でもよぉ……、あいつをブッ壊すとか散々言ってたが、そう言う意味じゃ手を出せねえ臆病者なのかも知れねえな、オレさまはよ」
ポロリと出た本音にしたっぱたちは笑顔を向けた。本気で好きならそれでいいんじゃないすか、そんな具合に。一方でスイッチが入れば容赦なく求めそうだよな、なんて呑気なことを考えていたという。
「あー!グズマさんだー!」
今日はよく人に会うらしい。今防衛戦終えてきたんだー、そう話すのはハウ。しまキングでありグズマの師匠でもあるハラの孫である。
「何だよ、ハウ。だが、せっかく出会っちまったんだ、バトルといこうぜ」
ニコッと笑顔を向けるハウも、旅を始めた頃に比べてだいぶ大人びて見えた。それに、彼のボールからは、強そうなオーラが漂っている。
(……ブッ壊しがいがあるな)
ニヤリそう思うと、パートナーのボールに手をかけた。