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「今度はオレさまがこいつを運転してやるからよ、かなこ、おまえは後ろに乗れや」
「え……っ、いや、あたしが前の方が…だってグズマさん、すごい勢いで走らせそうだし………」

ははは!と豪快に笑ってるところからして本気だと思う。だがこのまま乗らないとそれはそれで怒りそうだったから、仕方なくちょこんとグズマの後ろに腰かけた。

(……っ)

恐る恐るグズマの腰に腕を回す。まるで自分から抱きつく格好に、恥ずかしさと緊張感が増す。そんなんじゃ振り落とされるぜ、そう言うグズマはいつまでも楽しそうで。

「………っ!」
「ほら、行くぜ!」

ぐいっと手を引かれ、思いっきりグズマの背中に抱きつくことになってしまい、途端にかなこの顔は真っ赤に染まった。一方のグズマは、かなこの手を引く瞬間から全神経を背中に集中させていたという……。

「きゃー!グズマさん、早すぎます……!」
「何言ってんだか聞こえねえな!もっとくっつけよ、かなこ!」
「えー?なにー?」

端から見れば楽しそうにはしゃぐカップルにしか見えないだろう。それを嬉しいと思うと、この瞬間を思いっきり楽しめた。

「はあ、はあ……ライドポケモンでこんなに疲れたの、初めてです……」
「……そうかぁ?まあ、いい運動になったんじゃねえの」
「運動?あたし、そんなに太って見えます!?」

デリカシーがない!かなこはそう思ったが。

「別にそういう意味で言ったんじゃねえよ。アローラに来て、旅して歩いてる頃に比べりゃ、動くことも少なくなったんじゃねえかと勝手に思ってよ」
「……」

言葉は不器用。でも、自分の知らないところでいろんなことを考えてくれている人。もうすぐお別れの時間だと思うと、名残惜しくなる。

「……また!デート、してくれますよね……?」
「当たりめえだろ、オレさまを何だと思ってやがる」
「……ありがとう、グズマさん!」

ニコッと笑う笑顔は、自分が今まで見てきた他の誰よりも眩しく見えた。思わず抱きしめたくなったが、さっきの感触で我慢しといてやろう、そう思い直すとひらひらと手を振って別れた。


bkm
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