「あらあらグズマくん、こんな朝早くからデートの誘い?」
「あ……、ああ……、まあな」
顔を真っ赤にしてそう答えるグズマと、楽しそうにニヤニヤしているママ。その光景は不思議でしかなかった。
「……ってママ!何か知ってるの!?」
そう聞くとうふふ、と意味ありげに笑う。
「知ってるもなにも、昨日、あなたたちを見かけたのよ、ハウオリビーチで」
「「え……」」
あれだけ大声で喧嘩してれば誰かは見ているだろうと普通は思うが、まさか身内であるママが見ているとは。穴があったら入りたい気分だ。
「グズマくん、かなこのこと、宜しく頼んだわよ!あなたになら、わたしの娘を任せられます」
「……あ、は、はい……、こちら、こそ……?」
妙にたどたどしいグズマは物珍しいが。そんな余韻に浸ってる間もなくデートに行って来なさいな!とぐいぐい背中を押されては、抵抗もできない。
「でもねグズマくん、いきなり変な真似はダメよ?」
そう言ってウインクを飛ばしてくるかなこのママは最強だ、何となくそう思った。ルザミーネも大概だったが、大人の女というのはどうも強いらしい。
「……行くぜ、かなこ」
「……えっ、あっ……、はい」
サラリと差し出された手は自分のよりもずっと大きくて。守られている感じがして、温かかった。
「かなこ!それに、グズマくんも一緒とは珍しいね」
「あんた……」
しまった、グズマはそう思った。行くあてを決めずふらり歩いていたが、ここはククイの研究所があったんだ、そう思うが遅かった。
「は、博士!どう、したんですか?」
「それはこっちのセリフだぜ!てっきり、ポケモンリーグで会えると思っていたから驚いたぜ」
「で、ですよねぇ……」
苦笑いをしながらひらりと博士の追跡を交わすと、ライドポケモンに乗ろうと提案した。