06
「ちょっと……グズマさん、痛いですって……!」

半ば無理やりに。バトルツリーからかなこを引っ張ってきたことを少し後悔した。悪かったな、ぶっきらぼうに謝るとひとまず事情を説明した。

「おまえ……オレさまと戦う前、変なオヤジに絡まれてただろうがよ」
「えっ?あぁ、あの人……って!何で知ってるんですか!?そのこと……」

最後は尻すぼみで何を言ったのか聞き取れなかったが、恥ずかしさと気持ち悪さが混ざったような表情はどこか、大人びて見えた。

「んなことはどうでも。それより、あんな野郎がいる施設にてめえひとりで行ったら許さねえからな!」
「……何で、グズマさんの許可が必要なんですか?バトルしたいだけなのに……」
「な、何でもだよ!悪いか!」

かなこにはなぜグズマがそこまでムキになっているのか理解できなかった。確かに目がギラギラしているトレーナーは数多くいたが、バトルともなれば皆マトモである。

「……だってあたし、グズマさんの、その……彼女、でもないし………」
「………っ!!」

彼女。その言葉にハッとなった。無論、知らなかったわけでもないが、とりわけ意識したこともなかったわけで。そんな相手がいなかったし、何より、仲間として大切にしたいという気持ちとは全く違うものだったから。

「………ならよ」
「え………?」
「オレさまの彼女になれや、かなこ」
「…………………………………ええええぇっ!?!?」

ど、どういうこと……!?かなこの頭の中はまるでパニックだった。告白もなしにいきなりそんなことを言われて、嬉しくないはずはないが、オッケーしていいものなのか。

「そ……っ、それって……、あ、あたしのことが好きってこ……
「どっちなんだよ!彼女になるのかならねえのか!」
「………なり、ます、なりたいです……っ、グズマさんの彼女に……」
「……そうかよ」

そう言うグズマの表情はひどく穏やかで、肝心なことは聞けてないが、心は晴れやかな気持ちになっていた。とりあえず側に寄ってみると、ビクッと大きな反応をされた。

「……な、何だよ。オレさまだってな、その……、心の準備ってものが、できてねえってか、な」
「……?変なグズマさん!」
「はぁ!?オレさまに惚れてるくせに非難するのかよ、女ってのは怖いわな」
「違いますよ、好きだから。グズマさんの反応が、可愛いなって思って!」

可愛い……そんな風に言われることは珍しく、反応に困ってしまうが、それでも。

「……おまえのこと。」
「え……?」
「かなこのこと、守ってやりてえと、あの時そう思ったわけよ。だからよぉ、これが俗に言う、好きって気持ちなんじゃねえのかって思ってな」

かなこは思った。きっとこの人__グズマは、優しい人なんだ、と。そしてそんな彼が自分を認めて、好きだと言ってくれたことを、心から幸せに思うのだった。


bkm
prev next
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -