05
「なるほど……グレイトッ、だな!」

スカル団を解散させてから一度もあの屋敷には戻らず、現在は自宅近くのモーテルを拠点に生活している。島巡り自体を認めるにはまだそれなりに時間はかかるが、鍛えた己と相棒たちの能力を試すにはちょうどいい施設が、アローラ地方には幸いにも2箇所ある。その1つであるバトルツリーでグズマは今、修行に励んでいた。

「さあて、今日はどいつをブッ壊してやろうか」

ククッと高笑いする様は端から見れば怖い奴だが、根は真面目でバトルが好き。それはここに来るトレーナーと何ら変わりない……はずだったが。

(よかったって……訳わかんねえ)

思い出すのはひとりのトレーナーのことで。初めてマリエシティで会った時から、不思議な女だと思っていた。バトルをするたびに強くそう思い、いつしか尊敬の眼差しで見るようにまでなった。オレさまを変えてくれたのはコイツ__それは紛れもない真実であり、恐らく惚れてしまっているのも事実。だが、ここまで心揺さぶられる事態になるとはどうかしている。カタカタと相棒の入っているボールが揺れ、もしかすると主の動揺が伝わっているのかも知れない。

「……グズマさん!!」

そんな中、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。

「……!かなこ!?お、おまえも来たのかよ!」

あれから数日。チャンピオン防衛戦やポケモン捕獲を進めながらも、グズマのことが気になって仕方がなかった。実際に会って、話をして、彼女__ルザミーネがグズマの想い人ではなかったことに安堵した。だが、自分が告白する間もなくグズマは出ていってしまい、今日という今日は、と追いかけてきたのだ。

「……まあいい。おまえの実力ならすぐにオレさまのところまで来るだろうよ」

そう意味深な言葉を残していなくなってしまった。仕方なく受付で話を聞くと、20人抜きの戦いが始まった。

「おおっ……、いい身体……。おじちゃんが育ててあげよう!」
「……えっ!?」

あと1人で20人めという時。飛んでもないトレーナーがやって来た。相手の手の内を知りたいと密かに陰に隠れていたグズマは、彼の顔を見てギョッとした。

(何だぁ……!?オヤジじゃねえかよ)

その瞬間、今までになかったような強い感情が自分の中に流れ込んできた。急いで階段をかけ上がり彼女の到着を待つと、猛スピードで勝負を進めた。


bkm
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