03
「あ……っ」

目の前から歩いて来たのは待ち人、グズマだった。ポータウンや彼の家、他にスカル団が立ち寄りそうなあらゆる場所を探しても、見つけられなかった人。その人が今、目の前にいる____

「破壊という言葉が人の形をしているのが、このオレさま、グズマだぜ!」
「グズマさん……!?元気、ですか……?」

かなこの問いには答えず、黙って持ち場につくグズマの態度に少し寂しさを覚えたが、言葉を交わさなくても唯一語れるのがポケモン勝負。チャンピオンたるもの、受けて立たないわけにはいかない。

「お願いします!!」

彼のパートナー、グソクムシャと彼女のパートナー、ガオガエンが睨み合う。孤高にそびえ立つリーグの頂での最高の試合が、始まった。

「ブッ壊せないけどよぉ!おまえ、強くて楽しいなぁ!」
「……ありがとうございました!」

バトルが終わるなり笑顔で、それでいて悔しそうな表情を浮かべてグズマはそう言った。楽しい、あの元スカル団ボスからそんな言葉が聞けるとは。そう思うと微笑ましくなった。

「アローラの風が吹けば、なにが起きるかわからねえ。また会うとき、オレさまがどうなっているか、おまえが確かめてくれや」
「……あ、あの!」

気づけば去り行く背中にそう声をかけていた。楽しかった時間をこのまま終わらせたくないし、聞きたいこともある。そう思うのに喉に張りついたかのように先の言葉が出てこない。それを不審に思ったグズマの手がまたな、そう言っているかのようにひらひらと揺れる。

「話……!話したいことがあるんです、だから……、ちょっと、待っててくれませんか……?」

少しの沈黙。外出たところにいるぜ、そう言ってくれた彼にはい、と勢いよく返事をすると、急いで支度をして入口へと向かった。


bkm
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