今はまだ友達だけど
「おれさー」
「うん」
「どうしたら、かなこの大切な人になれるのかなー」
「……………………えっ!?!?」

ハウの予想だにしない問いに思いっきり熱いエネココアを飲み込んでしまった。お陰で喉がヒリヒリ痛い。

「だってさーかなこ、いっつもグラジオのことばっか見てるよねー」
「そ、れは……」

ハウの観察力が鋭いのは仲間内でも有名で、リーリエはもちろん、元スカル団のボスであるグズマですらそう思っている。特にずっと旅をしてきた中で、初めこそ印象は良くなかったが、次第に心惹かれる存在になっていたことを、ハウは密かに見抜いていたのだ。それがカントーに修行に行ってしまうともなれば、なおさら自分の想いに気づかされたわけで。

「おれだってわかってるけどー、チャンピオンのパートナーになるなら、もっと強くならなきゃなーって。じーちゃんもそう言ってたしさー」
「そ、んなこと……」

確かにポケモントレーナーでかなこの右に出る者はいない。幾度となく防衛戦を行ってきたが、その旅にパートナーたちのレベルは上がり、一度もその座を譲ったことがないのだから。だが、それとこれとは別である。

「グラジオは……、あたしのこと、妹みたいにしか思ってないよ」
「そうかなー」

お得意の頭の後ろで腕を組むポーズでハウは言う。納得いかない、そんな具合に。

「………………でもね」
「んー?」
「ハウの気持ち、その…、嬉しかったから…………、前向きに考えてみようかなって、そう、思って……」

無理しなくていいよー、ほんとはそう言いたかった。いつまでも友達ポジションでいるのもそれはそれで楽しいし、実際友達だとしてもかなこを守ることはできる。だが、ずっと旅をしてきて、ハウの強さを引き出させてくれたのは、紛れもなくかなこだと気づいた。かなこがいなければ楽しんで勝負するだけのお気楽な島巡りだったと思う。それが、スカル団やエーテル財団との対決、そしてキャプテンやしまキング、しまクイーンとの勝負に対するかなこの姿勢を通じて、パートナーたちとの絆を深めなければほんとの強さを引き出すことはできない、そう感じたから改めて鍛え直したのだから。

「……おれ、いつまでも待つからさー。その間に、かなこが驚くくらいにいい男になってるから」
「……ふふ。ハウ、もう今でも立派にいい男だと思うよ!あたしが言うことじゃないけど」

温かい空気が流れる。自分たちの中にはまだ、恋という芽は出ていないのかもしれない。それでも、いつか必ず花を咲かせるまでに成長してくれると信じて、ハウはそっとかなこの手を取った。


bkm
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