05
「大丈夫かい!?かなこちゃん!」
「ご、ごめんなさいアタマガ…」

その瞬間、視界がぼんやりして…私は意識を失った。

「…全く。手を出せないわたしの身にもなってほしいものだ」

なんていうミクリさんの呟きが聞こえるはずもなく…。

「ん……」

揺れてる……?あ、そうだ私…、いっきにお酒を飲んじゃって……。ふわりと目を開けると……

「かなこちゃん、もう少しで着くからね」
「あ…あの!大丈夫なんで…、降ろしてください…」

わかってたけど、近いし、その…。ばたばたと動いてみるけど暴れると落ちるよ?なんて言われるから、大人しくするしかなくて…。華麗に部屋を取るとミクリさんは、そっと私の身体をベッドに横たえた。

「かなこちゃん…無理はいけない。少し休みたまえ」
「あ、はい…すいません…」

持ってきてもらった水を一口飲んで、もう一度横になる。髪を撫でる手つきは優しくて…、警戒したら失礼かも、そんな風に思ったり。

「もうすぐダイゴが来る。わたしはソファーにいるから、何かあれば声を…」

離れていく手を何となく取った。お酒が入ってるから…?無意識…?それに観念したのかミクリさんは、今度はしっかりとベッドに腰を下ろして、優しい眼差しで私を見ている。その顔がひどく綺麗な気がして…、ちょっとだけ胸が苦しい。

「そうだかなこちゃん、近いうち、リーグに顔を出してくれないかい?挑戦者は来るものの、どうも手応えがなくてね…」
「…ふふ!私で良ければ、行きますよ」
「久しぶりにきみの本気を見せてもらおうと思ったのさ。ダイゴやきみのようなトレーナーはきっと、もう出てこないだろうからね」
「そんな…!」

それから。他愛ない話をして。急に襲ってきた眠気にそっと目を閉じた。少しだけ、ほんの少しだけ…、瞼に温かいものが降りてきた気がした…。


bkm
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