「メェークルに乗りたかったのに…」
「じゃあ、ボクが日傘を差すから、今度は一緒に乗ろうか」
もう、そんな器用な事できるの?半信半疑だったけど、ダイゴさんは左手で私を支えながら右手で傘を差してメェークルに指示を出してる…!やっぱり早くて振り落とされそうになるけど、後ろからの力がそれを許さない。そしてあの無駄に重いスーツを着たまま乗ってたから、珍しくダイゴさんが汗だくに…!
「やだ、ダイゴさん!汗だく!」
「うん…さすがに着たままはまずかったな…」
そう言うとスーツを脱いで腕まくりしてる。そんな仕草が新鮮で、ちょっぴりドキドキしたり。夜はまたあのホテルに泊まって。
「じゃあ、乾杯しようか、かなこちゃん!」
「うん!私たちの未来に、乾杯!」
チン、と音を立ててグラスが合わさる。穏やかな旅の、始まりだった。
「この度、デボンコーポレーションのご子息、ツワブキダイゴさんが彼女、かなこさんと結婚したとのことです!おめでとうございます!皆さん、盛大な拍手をお二人にお送りください!」
今日のトップニュース。当たり前だけど、どこに行ってもこれで。何となく外に出るタイミングを失ってしまった私たちは今、デボンの一室で黙ってお茶を飲んでいる。
「ふふ…こんなに大袈裟になるとは驚いたね」
そう言うダイゴさんはどこか楽しそう…おかしいのはいつもの事、だから気にしないけど。