09
*エピローグ*


「グリーン、あのさ…」
「別に?おまえに負けたくらいで、へこたれないからな、おれは」
「………そっか」
「で、どうすんの。あの話、受けるのか?」

博士を先に帰して三人は、旅に出る前のように並び、空を飛びながらマサラタウンを目指していた。あの話というのは、四天王の大将であるワタルが殿堂入り後に話したことである。

「レッドくん!それだけの腕前があれば、安心してポケモンリーグのチャンピオンを任せられる!どうだ?お願いできるか?」
「………少し、考えさせてください」

自分は、何のために冒険を始めたのか。レッドはそれを考えているようだった。初めてパートナーとなるポケモンをもらい、各地を旅して。仲間を増やして強くなり、時には傷つき、苦しみ。それでもめげずに前だけを向き、がむしゃらに走ってきた。ライバルと幾度となく戦って勝ち、ついにリーグの頂点にまで上り詰めた。それは、とても光栄なことだと思うが…。

「チャンピオンってことは、あそこに縛りつけられるんだよね?」
「……そうかもな。おまえ、性に合うのかよ」

あれだけ嫌味を言ってきたグリーンが、まるで別人かのように見えてかなこは、ハッとした。もしかするとこの頃から既に…、彼を異性として好きだという気持ちが芽生えていたのかもしれない。

「……迷ってるんだ。四天王に勝ったら、ものすごく強いポケモンがいるっていうハナダの洞窟に入れるし、それにまだ…」

三人でそれぞれ図鑑を見せ合う。ところどころ空きがあるのは誰も同じで、どれだけ生息してるんだと溜息をつきたくなった。

「ワタルさんは待ってくれるって言ってたからな、焦る必要もないだろ」
「うん…」
「あたしが言うのもなんだけど!そんなに、四天王に挑戦できるほど、各地のジムのレベルも低くないと思うし…」

決まった。三人の目標が。今までもこれからも、同じ夢に向かって競い合う同士。今日はゆっくり寝るか!そんなグリーンの声につられるようにスピードを速めると、自分たちの家族の待つ家へと帰っていった。


bkm
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