07
*束の間の休息*


「ん……」

人生で初めて高熱を出した。意識を取り戻した先にいたのは、あどけない寝顔の少年。なぜこんなことになったのか?正直熱に侵されて記憶は曖昧だが…、たどってみるとしよう。

「あ、レッド」

それはかなこがちょうどヤマブキシティに到着した時だった。疲れを残しながらも、晴れやかな表情の彼が気になって、思わず声をかけたのだ。

「実は、さ…」
「えっ?すごい!やっぱりレッドって、正義の味方なんだ!」

レッドの口から語られたのは、今しがた変なコスチュームを着た謎の悪党集団…つまりあのロケット団を、カントーいちの大企業、シルフカンパニーから追い払ったという武勇伝。かなこ自身もオツキミ山なりタマムシシティなりで戦ったが、そのリーダーとやらは強いとも聞く。そんな奴をあっさり通したレッドとはまさに、彼女からしたら英雄だ。

「そんなことないよ、かなこにだってできたと思う」

そして言葉数は少ないが、天然のたらしとも呼べるべく人を喜ばせるのが得意だ。いわゆる完璧人間とも言える彼は少しずつ、遠い存在となり始めていたのかもしれない。

「じゃあぼく、行くね」
「うん!また、どこかで」

笑顔で見送った後。自分は自分のペースで進もう…そう決意した途端に、身体が傾いた。思い返せば朝から頭がボーッとしていたかもしれない、だがそれも、時既に遅しである。

「……かなこ!!」

自分の名を呼ぶ声が、遠くから聞こえた。


「……はよ、気づいたか」
「ねえ、なんでグリーンが?」

そう、彼女に声をかけたのはグリーンだった。レッドに対するそれよりはましだが、博士の孫だからなのか単に育ちが悪いのか、やたらとかなこに突っかかってくるから苦手。昔からそう思っていたがまさか、こんな形で二人きりになるとは思ってもみなかった。

「てゆかもう、朝なんだね…」
「だな。おまえ、なかなか起きねえから、おれさままで寝ちまったただろ」

プイとそっぽを向くグリーンの横顔は、またしても赤く見えなくもなかった。だが、それを気にするよりも先に、同い年なのにこうも顔が整ってると、近所の子がかっこいいと騒いでいたのはあながち間違ってなかったのかもと気づく。

「……なに、かなこ。おれに惚れた?」
「……なっ、なんでそうなるの」
「今、見てただろ?ああ、グリーンって、こんなかっこよかったんだ…ってな!」
「ち、違う!そんなことあるわけない!」
「ってえな!病人が枕なんか投げんなよな!」

黙っていればかっこいいのに…胸の奥でそんな風に思いながら、束の間の休息を楽しんだ。


bkm
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