03
*豪華客船*


「ボンジュール!かなこ!」

とりあえず船の中をうろうろとしているとレッドに次いでグリーンにも遭遇した。この船にはいあいぎりの名人が乗っていると聞いたが、彼もそれが目当てだったのか。自分は偶然チケットをもらったが、彼らも同じような理由なのだろうか。

「やった……!」
「ふん……!とにかく……ポケモンはそこそこ育ててるようだな!」

こないだの仕返しだ、かなこはそんな事を思っていた。ハナダシティでは馬鹿にされるような目で見られたのだ、1回くらいグリーンから勝ちをもらっても恨まれる事はないだろう。船酔いで大変そうだった船長の背中を、遅れてきたレッドと一緒にさすりながら、豪華客船を後にした。

「行っちゃったね…」
「そうだね。でも、また来るよ」

このレッドの呟きが後々現実になるであろう事は、この時のかなこにはわからなかった。

「レッドは今、どんなポケモンを連れてるの?」

クチバジムに寄る前の休憩。ロビーの広いスペースで互いのポケモンを見せ合う。リーダーのマチスはでんきタイプを扱うらしく、リザードもフシギソウも楽勝だね、なんて会話を楽しんだ。

「タマムシシティあたりに行ったら、勝負する?」
「えっ、でも…」

せっかちなグリーンとは違うが、レッドも先を急いでいるのではないかと思った。この先にはイワヤマトンネルという難関もある…自分を待っていてなどと図々しいお願いをする事はできない。

「そんな、気にするほどの事じゃないよ。もし会ったら、そのくらいの気持ちで、考えといて」
「うん…」

レッドの父親は今、どこにいるのかさっぱりわからない。聞いたら教えてくれるだろうが、何となく聞きづらい。母と二人暮らしで、一人っ子で、寂しい思いをしただろうに。それとも、母のためにと思った結果、しっかり者になったのか。彼の言葉は、かなこの胸を熱くしていく。

「おやすみ、レッド」
「うん、おやすみ、かなこ」

翌日。高すぎて購入できなかった自転車の引き換え券をもらい、再びハナダシティから冒険を再開した。


bkm
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