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「あ……」

ネズさんの修羅場を目撃した。マリィと勝負の約束をしていたからスパイクタウンに来たんだけど、来て早々こんな場面を見るなんて。もっと隠れたところでやってくれたらいいのに。

「見苦しいところを見せちまいましたね」
「はあ…」

本当なら防衛戦のことだけで悩みたい。ネズさんのこと、好きなのかも…そう思った途端にあんな話聞かされて、どうしたらいいのかわからなくなる。…こんなことなら、大人しくキバナさんに惚れてたらよかったのかな。

「彼女です、おれの相手は」
「………えっ」

相手?普通、そういう紹介の仕方するもの?ラブラブな雰囲気だったらわかるけど明らかに険悪なムードだったし、知らされたところで素直にそうですか、なんて言えるわけない。もちろんつき合ってたってケンカくらいすると思う…でも、恋人のそれじゃなかった。

「勘違いしてやがりますね?かなこ。週刊誌のネタの原因の女ですよ」
「……へ?」

マリィに会いに行くつもり、そう告げたら家の近くのカフェに案内された。カフェといってもナックルシティやシュートシティのようなモダンなものじゃなくて、アットホームな喫茶のようなところだったけど。

「おれ、ダメなやつだから。女性とのつき合いも上手くいかないんだよね」
「はあ…」

今日、何度目かわからない溜息をついた。どしてあたしは、ネズさんのこんな話を聞かされてるんだろう。とゆうか、マリィを待たせてるんだけど?

「退屈でしたね、こんな話」
「えっ、あっ、その…」

別に聞きたかったわけじゃないけど、顔に出てたのなら悪いことしちゃったな…。そんなつもりはないことを伝えたら、迷惑をかけたお詫びにって次の新曲のデモをくれた。

「えっ、いいんですか?こんな貴重なもの…」
「ホップにも聴かせてやってほしいよね」

思いがけないプレゼントに上機嫌のまま外に出ると、遅いよとばかりにマリィが登場したもんだから、二人して笑ってしまった。やっぱりネズさんには、事実がどこにあるとしてもずっと、こうして笑っていてほしい。


bkm
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