「どこか悪いのなら、別の日にするが…」
すでに準備万端のダンデさんに声をかけられてハッとした。眠いし昨日のことが頭から離れないけど、今は仕事に集中。笑顔を返すと、ジムチャレンジャーに向けてのメッセージを含めたあたしたちの対談が、始まった。
「さすがだぜ、かなこくん。キミはどんどんチャンピオンらしくなっていくな!」
「そんな…!ダンデさんに比べたら、まだまだですよぉ」
少しずつチャンピオンとして求められることが増えてきた気がする。いつまでもダンデさんに頼ってるわけにもいかないから、自立しなきゃとは思うけど。一人立ちするのに不安はつきまとう。一体この人は、10年以上もの間、どうやってこのプレッシャーに打ち勝ってきたんだろう。
「だが、無理はするな。キミのサポートをするためにオレたち大人がいるんだ、遠慮なく頼ってくれ」
それは自分が周りに助けられてきたからだ、そうダンデさんは話す。いくら年齢的には大人に近づいてきたとはいえ、心は子供のまま。世間なんて何もわからない。今のところ街ですれ違う人たちはみんな優しい…、だからこそ安心できているのもあるけど。ひとつの失敗で、いつ彼らを敵に回すかわからないから…。
「また、連れていってくれ。ネズのライブに」
「……へ?あ、はい!」
あたしが不安に思ってるとわかったのかな?無邪気な顔でそんな風に言われたら、嫌でも穏やかな気持ちになる。やっぱりダンデさんはすごい人だ、改めて尊敬の念を抱いた。