バレンタイン
ヒロイン:oras主人公(※さすらいの石集めとは全く関係ありません)


「ダイゴさん…!」
「かなこちゃん……!?」

今年の冬は比較的温かいと言われているホウエンでも凍える寒さが続いている。ふわりと重ね合わせた手を広げふぅ、と息を吐いた。少し前までは超古代ポケモンの復活や隕石の襲撃などと騒がしかったが、ある1人の少女のお陰で現在は元の平和な世界が保たれているというもの。

「そうか、わかった。ありがとう、ミクリ」

いつもの様にホウエン地方8つ目のジムを守っているミクリから報告を受け、本来の仕事であるリーグチャンピオンへと戻る男、ダイゴ。その眼差しは真剣そのものだが…、四天王の1人であるカゲツに言わせれば、ぼんやりとしている事も増えたのだとか。

「どうせアレだろ?ダイゴ。良い歳のくせにバレンタインとか期待してんだろ」

そんなやり取りの中、久しぶりにあの少女から連絡が来た。少しだけ浮き足立つ気持ちを抑え初めて出会った場所、ムロタウンへとエアームドを促した。

「夜空が綺麗だな……」

柄にもない事を呟くのも、恐らく少女の影響であろう。純粋で汚れを知らない、それでいて強さと優しさはきちんと持っている。この男にとって、少女の存在は大きいものになっていったのだろうか。

「ダイゴさん…!」
「かなこちゃん……!?」

…はっとした。息を切らしながら走ってくる少女はいつもよりもぐっと大人びて見えた。…冬のせい。そして、この時期のせい。そう思えば頷ける。

「これ…、ダイゴさんに…」
「え?ボクに…?」

そっと差し出されたのは、赤い紙袋。チラリと中を覗けば、可愛らしいラッピングが施された、お菓子の様なもの。…なるほど、そう納得すると自然と笑みが零れた。

「ふふ…ありがとう、かなこちゃん」
「いえ……」

頬を赤く染める少女はまた、いつもとは違っていて。その様が酷く心地良くて、こんな提案をした。

「きみのラティアスに、乗せてくれるかい?」
「…は、はい…!」

恋に歳の差など関係はないのかも知れない。二人で旅するホウエン地方の夜空はまた格別だった。


bkm
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