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「はあ、はあ……」

さすが男の人たち。足が速すぎてついていけない。冒険をやめてからというもの、ワイルドエリアでトレーニングしながら迷ってしまうことはあっても、こんなに走る場面はほとんどないから。おかげで呼吸が苦しい。ふう…深く息を吐くとどこからともなくいたぞ、なんて声が聞こえてくる。__ここを離れなきゃ。そう思うのに、身体に力が入らない…。

「………っ!?」
「……静かに」

グッと強い力に引かれたと思った時にはネズさんの腕の中。細身だと思ってたけど、やっぱり男の人…なんだ。あたしなんか、すっぽりおさまってしまう。片腕は腰に、もう片方は頭に。誰かに抱きしめられるのって、すごく安心する……。

「ホップと合流しますかね」
「………」

パッと身体が離されると、距離の近さに急に恥ずかしくなってきた。あれ…もしかして、ドキドキいってる……?月明かりに照らされたネズさんはいつもに増して素敵に見えて、まともに目を合わせられない。

「あいつらはもう来ねえです。だから、心配せんでもよか」

あ…。方言、初めて聞いた…。いつも敬語混じりな言い方しかしないから、また胸がキュンとした。やっぱりこれは恋なのかもしれない。そんな淡くて温かな気持ちを抱きながら、彼らの家に泊まった。


bkm
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