06
「かなこくん、今日はずいぶんとゴキゲンだな!」

こないだキバナさんはお詫びと言ったけど、ネズさんもネズさんでそんなような趣旨で次のライブのチケットを送ってくれた。ちょうど今日は仕事も入ってなかったから、ついでにバトルタワーに寄ってからお邪魔することに決めた。

「ダンデさんは、ネズさんのライブに行ったことありますか?」
「いや、ないぜ。チャンピオンを引退してもオーナーの仕事とかで忙しかったからな」

チャンピオンとは忙しい職業。そのはずなのに、あたしは裏でこの人に助けられてるんだな…。詳しくはわからないけど、面倒な仕事とかは直接こっちに回ってこないよう配慮してくれてるみたいだし、ダンデさんには感謝しかない。だから。その気持ちを込めて、彼をライブに誘った。

「すごいな!スパイクタウンじゃないみたいだぜ!」

ダンデさんは終始楽しそうだった。かっこよすぎて直視できないバトルタワーでの制服とは違い、ラフな格好に身を包む姿は、オーラこそあるけど普通の青年。鎧を取ってしまえばみんな、ただの人間なのかも。

「わぁ……!」

ライブは大盛況。熱気に包まれたスパイクタウンは、ネズさんのおかげで活気を取り戻したとあたしは思う。街を盛り上げるという彼の思惑はちゃんと成功してる。ダメなヤツなんて本人は言うけど…、面倒見はいいし、気性は荒くても気前のよいアニキ。通行人の誰もが振り返るような素敵な歌を歌える人。

「珍しい客がいますね、おれの見間違いかと思いましたよ」
「ネズ!オマエのライブ、最高だったぜ!」

隣ではしゃぐダンデさんは、間違いなくこの雰囲気を気に入ったんだろうね。また、一緒に行ってくれないかな…なんて言ったら、キバナさんが黙ってなさそうだけど。

「……っ」

二人の世界に入っていたはずなのに、ふとこちらに向けられる笑顔はすごく綺麗で…、一瞬時が止まってしまうかと思った。思わずダンデさんの服の裾を掴んだら、なるほど、なんて呟きにも似た言葉が降ってくる。

「また…、お邪魔してもいいですか?」
「きみが来たいというなら、何度でも招待しますよ」

あの時__シーソーコンビの一件があった時は本当に、避けられてるのかなと思った。あたしがいたら何か起きるから近寄らないでほしいんだって。でも、こうして嬉しそうに笑ってくれると何だか…。

「ダンデさん、送りますよ!」
「ん?それは逆だぜ?男のオレがユウリくんを送っていく番だ」

帰り道。こないだとはまるで違う展開が待っていた。素直に彼の言葉を信じたあたしがバカだった…あれから何回同じところ歩いてるの。結局元いた場所に戻ってきちゃったら、マリィに笑われた。

「泊まっていきんしゃい、二人とも」

同じく苦笑いするダンデさんを見て爆笑するネズさん。あ、こんな風にも、笑うんだ…。この日だけでいろんな表情を見れて、ちょっとだけ距離が縮まったような気がした。


bkm
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