「〜〜〜♪」
ネズさんのくれたチケットを片手に、久しぶりのスパイクタウンを訪れた。初めて来た時は失礼だけど寂れてる…そんな印象があったのに。今は相変わらずネオンが光る大人の街というイメージはあるけど、若者たちの活気で溢れていた。ファン層は男の人の方が多いのかな…ちょっと怖いけど、最近は人気が出てきて予約制にしたと言ってたから、大丈夫だよね。
「すごい……!」
ストリートライブとは全然違う。熱気がとにかくすごい。中にはえっちな曲もあったけど、初めてライブに参加したあたしでも十分に楽しめる内容だった。
「よう、かなこ」
「えっ?来てたんですか?キバナさん」
ライブは大盛況のまま終演。帰ろうかなと会場を後にしようとした時、キバナさんに会った。背が高いから後ろからでも余裕で見れる、なんていうからうらやましい。あたしなんて、ひょこひょこ人の隙間から見てたもん。
「おや、きみたちですか」
「いやいやいや、オマエが呼んだんだろ」
この二人、何だかんだで仲良しだ。あたしのことなんかお構いなしにわいわいやってる。邪魔したら悪いし、おいとましようかな。
「……な?ユウリ」
「へっ?何ですか?」
いきなり話しかけられて驚く間もなくとあるお店へ連れていかれた。ここ…もしかしなくてもバーだし、どしてまん中に挟まれるような形で座ってるんだろう。
「そういやさ、あの女。どうなったんだっけ」
「おまえね。かなこのいる前でする話じゃねえです」
お酒のせいなの?あたしの知らない世界がどんどん展開されてるんだけど…マリィでも呼ぼうかな。ガサゴソと鞄の中からスマホロトムを探していると突然、肩を抱かれた。
「……わっ、お酒くさい…」
「こんな軽い男はやめて、つき合うならオレさまにしとけよな?かなこ」
軽い男…どういう意味。それに、つき合うならって…。当たり前に相手がいないみたいな言い方されるといい気分はしない。でも、彼氏いますから!なんて言えない事実が痛い。
「とゆうか、キバナさん彼女いるでしょう?軽々しくそういうこと言わない方がいいですよ」
「クク…かなこに言われてやがりますね」
「ネズさんも!何笑ってるんですか!disられてますよ!」
ああもう、酔っ払いの相手なんて面倒!ここはチャンピオンらしく、かっこよく奢って家に帰ろう。半ば無理やりにお店を飛び出すと、背中の方から送りますよと力ない声が聞こえてくる。
「そらとぶタクシー使うから、大丈夫…」
「こんな時間にきみを一人で帰したら、マリィに怒られます」
もう、こういうところだけアニキなんだから嫌になる。マリィが待ってるから早く帰ってあげて。それだけ告げて、タクシーの到着を待った。