「アニキかあ…」
「急にどうしたんですか?あなた…ぼくの話、聞いてました?」
今日はビートくんとプライベートバトル。スタジアムを貸し切って行うのは、ジムチャレンジに向けたエキシビションの練習のためでもあるけど。ファンが殺到するのを防ぐ目的もある。ダンデさんほどじゃないけど、あたしにもそれなりにファンがつくようになったからって、ビートくんが配慮してくれた。
「……うらやましいですか」
「へ?あ、うん…」
マリィにもホップにもアニキがいて、常時うらやましいと思うことも多い。今のあたしの年頃の子が、年上に憧れがあるだけです、なんてビートくんは言うけど。
「……大人なんて、ろくな人がいませんよ」
「ビートくんが言うと重たいね」
「それより、バァさんに言わせればこれはデートみたいなので。カフェにでも行くとしましょう」
……え?今、デートって言った?こないだホップに会いに研究所に行った時、ソニアが恋はした方がいいよ、なんて言ってたけど。まだそういうのよくわからないから…。
「かなこさん?」
「あ、ごめん!行こう!カフェ!」
デートなんて言うわりに涼しい顔をしているビートくんとは対照的に、変に意識しちゃって上の空だったあたし。これから、どうなっていくんだろう。期待と不安に包まれながら、数日が過ぎていった。